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アイガモとコイが田んぼで働く。合鴨(あいがも)農法のデメリットと、私たちが大切にしてきたこと

COLUMN / 産地のはなし

新潟県津南町の生産者・鶴巻さんの田んぼには、除草剤の代わりにアイガモとコイが働いています。ある年の稲刈りにお伺いしたときの記録です。

結論から言うと、合鴨農法は水田にアイガモ(とコイ)を放して草を食べてもらう方法で、農林水産省近畿農政局の資料は、成鳥となった鴨はと畜されて食用になると説明しています。この記事は、創業者が鶴巻さんから伺った話をもとに、収穫量が少なくなること、毎晩の手間、引き上げたアイガモのその後を整理したものです。

草との戦いを、生き物に手伝ってもらう

お米づくりでは、雑草の管理が大きな課題のひとつです。除草剤を使わない栽培では、草取りに大変な手間がかかります。

鶴巻さんは、除草剤の代わりにアイガモとコイを味方にしています。5月の終わり、田植えのあとの水田にアイガモとコイを放つと、二羽(二匹)は水草を食べながら田んぼの隅々を回り、草取りを担ってくれます。コイは水田にそのまま棲みつきますが、鶴巻さんの田んぼでは、カモが天敵(キツネ、イタチ、猛禽類など)に狙われるため、毎晩、家族の手で小屋へ移動させる必要があります。北海道の試験(平成9〜11年度)では、猛禽類などの被害により、水田から引き上げる時点で残っていたアイガモは、地域と年次の全平均で約70%でした(北海道 滝川畜試・中央農試の成績概要書、平成12年1月)。

合鴨農法のデメリット:収穫量が少なくなる

正直にお伝えすると、この方法には弱みもあります。創業者が鶴巻さんから伺った話では、収穫量は一般的な栽培より少なくなるとのことでした。アイガモもコイも、すべての雑草を除草剤のようには取りきれないことが一因だというお話でした。

理由はそれだけではありません。お米が実ってくると、草取り名人のアイガモも穂をついばみ始めます。山形県の農業情報サイト「やまがたアグリネット」の米づくりQ&Aは、新潟県の農業試験場の担当者の答えとして、アイガモは稲の穂が出て花が咲く頃に引き上げるのがふつうで、生まれて60日以上たつと親と同じくらいに成長し、穂を食べてしまうため、と紹介しています(引き上げ時期は地方によって異なるとも書かれています)。鶴巻さんは、アイガモにも分け前を残したいという考えから、その時期を過ぎても早めには引き上げなかったそうです。稲刈りも地域で最も遅い時期に行うため、雀などの野鳥にとっても格好の餌場になります。

量より質を大切にする。人間の都合ではなく、稲や生き物たちの理屈に合わせる。それも、収穫量を追わなかった理由のひとつでした。

大きくなったアイガモを、どうするか

合鴨農法には、もうひとつ、向き合う点があります。田んぼから引き上げたアイガモの、その後の扱いです。農林水産省近畿農政局の資料は、アイガモ水稲同時作(水田に鴨を放飼し、鴨肉と米の生産を同時に行う農法)について、「成鳥となった鴨はと畜されて食用となる」と説明しています。山形県の農業情報サイトの米づくりQ&Aにも、新潟県の酒米をつくる田んぼの例として、秋に刈り取りが済むとアイガモとは別れ、肉やハムになると紹介されています。引き上げ後の扱いについて、全国の状況を示す公的な統計は確認できませんでした。世話をしてきた生産者にとっては、割り切れない思いが残る場面でもあると、私たちは受けとめています。

当時、鶴巻さんと話していたのは、アイガモを1年で終わらせず、育てる場所(カモセンター)を作れないかという構想でした。そこで卵を産んでもらい、孵化させ、子ガモにまた活躍してもらう。高齢化が進む生産者の労力を、カモの力で支えられないかという発想です。

量より質、を選ぶということ

お伺いしたお話では、鶴巻さんの田んぼは反あたり8俵ほど。一般的な栽培なら11〜12俵ほどとのことでした(全国の統計の数字ではなく、お話のなかの目安です)。それでも鶴巻さんが合鴨農法を選び続けていたのは、量より質を尊重する品種を選び、無理な栽培をしないというポリシーがあったからです。人間の都合に合わせた栽培ではなく、稲の生理に合わせた栽培を選ぶなら、12俵ではなく8俵の方が、むしろ自然なのだと思う——そう話してくれました。

鶴巻さんの田んぼがあるのは、新潟県津南町です。生産者の高齢化は、この地域に限らず、農業全体の課題でもあります。農林水産省の統計(令和8年の農業構造動態調査・標本調査による推定値)では、基幹的農業従事者(個人経営体)98.7万人のうち、65歳以上は69.3万人、平均年齢は67.7歳です。

除草剤に頼らず、生き物の力を借りて米をつくる。手間がかかり、収穫量も少なくなるとのことでした。それでも、こうした生産者の話を聞き、「誰が、どう育てたか」を知ることを、1988年創業の地球人倶楽部は大切にしています。

合鴨農法の、良いところと難しいところ

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観点 合鴨農法
除草 アイガモとコイが水草を食べ、除草剤の代わりを務める
収穫量 鶴巻さんの田んぼでは、一般的な栽培より少なくなるとのこと(お伺いしたお話)
手間 カモは天敵に狙われるため、毎晩小屋へ移動させる必要がある
実りの時期 穂が出るとアイガモが稲をついばみ始める。稲刈りも遅くなり、野鳥の餌場にもなる
もうひとつの課題 引き上げたアイガモのその後の扱い。生産者にとって割り切れない面もある

なお、合鴨農法で育てた米が、すべて有機JASというわけではありません。農林水産省の「有機農産物検査認証制度ハンドブック」(令和6年10月)は、有害動植物の防除方法のうち生物的防除の例として、「アイガモや鶏やコイによる除草など小動物の利用」を挙げています。米の袋では、「有機JAS」マークや「特別栽培」などの表示で確認できます。

よくある質問

Q. 合鴨農法とは、どういう方法ですか?

A. 田植えのあとの水田にアイガモ(とコイ)を放し、水草を食べてもらうことで除草剤を使わずに草取りを行う米づくりの方法です。生き物の力を借りて、田んぼの管理を成り立たせる仕組みです。

Q. 合鴨農法のデメリットは何ですか?

A. 創業者が鶴巻さんから伺った話では、収穫量が一般的な栽培より少なくなるとのことでした(全国の統計ではなく、伺った話です)。アイガモもコイも除草剤のように雑草を取りきれないことが一因だというお話でした。また、穂が出るとアイガモが稲をついばみ始めること、天敵から守るため毎晩小屋へ移動させる手間がかかることも挙げられます。

Q. 水田から引き上げたアイガモは、どうなるのですか?

A. 農林水産省近畿農政局の資料は、成鳥となった鴨はと畜されて食用になると説明しています。山形県の農業情報サイトの米づくりQ&Aには、新潟県の酒米をつくる田んぼの例として、秋の刈り取り後に肉やハムになるとあります。引き上げ後の扱いについて、全国の状況を示す公的な統計は確認できませんでした。世話をしてきた生産者にとっては、割り切れない思いが残る場面でもあります。

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