りんごは、なぜほかの果物や野菜を早く熟させるのか 「エチレン」という、熟すための合図
COLUMN / 食のはなし
りんごは、なぜほかの果物や野菜を早く熟させるのか
りんごが出すエチレンは、果実の成熟や過熟に関わる気体の植物ホルモンです。りんごのようにエチレンを多く出すものと、その影響を受けやすい野菜や果物は、一緒に貯蔵しないようにします(農研機構・長野県果樹試験場)。
「エチレン」という、熟すための合図
冷蔵庫の野菜室を開け、りんごの置き場所を探す。隣のブロッコリーが目に入ったら、見えない気体「エチレン」を思い出してみてください。
エチレンとは、どのようなものですか?
エチレンは、果実の成熟や過熟に関わる気体の植物ホルモンです。果実自身が出す、熟すための合図ともいえます(長野県果樹試験場)。
農研機構は、エチレンを「老化ホルモンとも呼ばれるガス状の植物ホルモン」と説明しています。野菜室で気になるのは、エチレンを出す量と、その影響を受ける度合いです。
生成量が多いものと、影響を受けやすいものを一緒に貯蔵しないようにすると、新鮮さを長持ちさせられます。りんごをしまうときの小さな工夫は、隣に置く相手を知ることから始まります。
りんごは、どれくらいエチレンを出すのですか?
農研機構の表で、エチレン生成量が「極多」とされているのは、りんごだけです。しかも、りんご自身のエチレン感受性も「高」とされています。
「生成量」は出す量、「感受性」は影響の受けやすさです。りんごはどちらの欄にも注目したくなる果物です。
品種による違いもあります。農研機構の研究では、20℃で保存した「王林」のエチレン生成量は、「ふじ」の10倍以上でした。売り場で見慣れた品種の名前の向こうにも、それぞれの性質があります。
りんごと一緒に置かないほうがよいものは何ですか?
ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、レタスなど、エチレン感受性が「高」のものは分けて保存します。キウイフルーツやバナナ、富有のカキも、農研機構の表では感受性が「高」です。
野菜室で、ブロッコリーとりんごを離して置く。その理由は、ブロッコリーの「極少/高」という組み合わせにあります。自分が出す量はごく少なくても、エチレンの影響は受けやすいのです。
一方、タマネギやダイコンは感受性が「低」、完熟のバレイショは「中」です。これはエチレンへの感受性の目安で、品目ごとの保存条件は異なります。
洋ナシは「多/高」、完熟のトマトは「多/低」。似た顔ぶれの果物や野菜も、表の中では違う組み合わせになります。冷蔵庫に何をしまうか思い浮かべながら、一覧をご覧ください。
| 品目 | エチレン生成量 | エチレン感受性 |
|---|---|---|
| リンゴ | 極多 | 高 |
| 洋ナシ | 多 | 高 |
| トマト(完熟) | 多 | 低 |
| メロン(ネットメロン) | 多 | 中 |
| モモ(溶質) | 多 | 中 |
| キウイフルーツ・バナナ | 中 | 高 |
| カキ(富有) | 少 | 高 |
| ブロッコリー・ホウレンソウ・キャベツ・レタス・パセリ | 極少 | 高 |
| キュウリ・ネギ | 少 | 高 |
| タマネギ・ニンニク・サツマイモ・ダイコン・ショウガ | 極少 | 低 |
| バレイショ(完熟) | 極少 | 中 |
出典:農研機構「青果物の最適貯蔵条件」。値は目安で、品種・栽培時期・産地で変わります。
家庭でりんごを保存するときは、どうすればよいですか?
りんごをポリエチレン袋に入れて冷蔵し、エチレン感受性の高いものと分けて保存します。農研機構は、厚さ0.03ミリ程度のポリエチレン袋が使いやすいとしています。
農研機構の成果展示ポスターによると、多くの青果物は低温ほど呼吸が抑えられ、品質が長く保たれます。一方、熱帯・亜熱帯に起源をもつ品目は、冷やしすぎると低温障害が起きることがあります。
家庭でのりんごの保存のくわしいコツは、実りの手帖の「りんごの保存方法」でも紹介しています。
産地では、りんごを翌年の夏までどう保つのですか?
貯蔵庫の酸素を下げ、二酸化炭素を上げて呼吸をさらに抑える、CA貯蔵という方法があります。長野県果樹試験場は、青森県産の「ふじ」が翌年の夏まで保存・販売されると紹介しています。
低温で貯蔵できる期間も、品種ごとに異なります。同試験場の目安では、早生の「つがる」は20〜30日程度、中生の「シナノゴールド」は3〜4か月程度、晩生の「ふじ」は5か月程度です。
もうひとつ、エチレンの働きを抑える薬、1-MCPを使う技術もあります。りんご・なし・かきで商品化され、りんごは収穫6日後までに密封施設でくん蒸処理します。
「シナノゴールド」では、この処理で収穫6か月後まで品質を保った成果が紹介されています。熟す合図を抑える技術が、果物を届ける時間を支えているのです。
よくある質問
Q. りんごとブロッコリーは、分けて保存したほうがよいですか?
はい。りんごのエチレン生成量は「極多」、ブロッコリーの感受性は「高」なので、分けて保存します。
Q. エチレンをあまり出さない野菜も、影響を受けますか?
はい。ほうれん草やレタスは、生成量が「極少」でも感受性は「高」です。出す量と影響の受けやすさは、それぞれ異なる性質です。
Q. 家庭では、りんごをどうしまえばよいですか?
ポリエチレン袋に入れて冷蔵し、エチレン感受性の高いものと分けて保存します。包装には厚さ0.03ミリ程度の袋が使いやすいとされています。
地球人倶楽部では、どのようにお取り扱いしていますか?
地球人倶楽部では、秋冬にりんごを産地からお届けしています。季節の果物として、お取り扱いしています。
参考にした資料
- 農研機構「青果物の最適貯蔵条件」
https://www.naro.go.jp/org/nfri/yakudachi/optimalstorage/index.html - 農研機構 成果展示ポスター「青果物の最適貯蔵条件」
https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/seikatenji/seika2025/2025_poster_59.pdf - 長野県果樹試験場「りんごの鮮度を保つ技術」
https://www.pref.nagano.lg.jp/nogyokankei/letter/documents/ntk454_fru1.pdf - 農研機構「リンゴ果実のエチレン生成量が1-MCPによる鮮度保持効果を左右する」
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2006/fruit06-22.html
(2026年10月19日に内容を確認しました)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果効能を保証するものではありません。体調や体質には個人差がありますので、気になる症状がある場合や持病のある方は、医療機関にご相談ください。