冬の野菜は、なぜ寒さにあたると甘くなるのか 「寒締め」という、寒さを味方にする育て方
COLUMN / 食のはなし
冬の野菜は、なぜ寒さにあたると甘くなるのか
冬の野菜が寒さにあたって甘くなるのは、耐寒性のある植物が低温に遭うと糖の含量を増やすためです。寒締めは、この働きを利用し、ハウスの開閉で外気にあてる温度を管理する育て方です(岩手県)。
「寒締め」という、寒さを味方にする育て方
12月の霜の白い畑と、台所でかじる冬大根の甘いひと切れ。その甘さの向こうには、寒さを取り込む育て方があります。
寒さにあたると、なぜ野菜は甘くなるのですか?
寒さに耐える性質を持つ植物は、低温に遭うと糖やビタミン類の含量が増えます。冬の甘さには、収穫前の畑で起こるこの変化が関わっています(岩手県)。
「耐寒性」とは、寒さに耐える性質のこと。岩手県の研究成果書は、耐寒性のある植物が低温に遭うと、糖やビタミン類の含量が上昇し、内部品質が高まると説明しています。
「寒締め」では、なぜハウスを開けるのですか?
外の冷たい空気にあて、低温で糖などの含量が高まる働きを利用するためです。寒締めほうれんそうは、ハウスを開けたり閉めたりして温度を管理します(岩手県)。
寒い日なら、戸を閉めておきたくなるものです。ところが畑では、育てたほうれん草のために、あえてハウスを開ける。冷たい外気を招き入れるその動作に、「寒締め」という育て方の面白さが詰まっています。
寒さを味方にするこの冬期の野菜は、北東北を中心に普及しています。岩手県内の主要地点で寒締めを始められるのは、おおむね12月上旬。地温が8℃以下になる日が目安です。
開ける、閉めるという身近な動作が、ほうれん草を育てる仕事になっているのです。
甘くなり始める寒さには、どんな目安がありますか?
ほうれんそうでは、前5日間の地温が8℃以下になると根の吸水停止が起こり、Brix糖度が上昇し始めます。東北農業研究センターが明らかにした結果を、岩手県の資料が紹介しています。
地温は、土の温度です。寒締めの始まりを知らせる目安は、葉のまわりの空気ではなく、根のある土の中にあります。
「甘くなった」という味の印象に、研究ではBrix糖度という指標が添えられています。前5日間の土の温度と、糖度が上がり始める時期。冬の畑を見つめる研究から、寒締めの目安が生まれました。
冬の大根は、どの部分が甘くなるのですか?
岡山県の品種「冬職人」の研究では、地上に出た上の部分、抽根部の糖度がとくに高いとされています。10月下旬から12月上旬にかけて、収穫が遅いほど糖度が高まる傾向もありました。
白い大根の上のほうを見て、土から顔を出していた姿を思い浮かべてみます。「抽根部」という少し難しい言葉も、畑の大根を思えば、ぐっと身近です。
真庭市蒜山地域では、晩秋から初冬に低温にあて、糖度を高めた大根を生産しています。収穫前12日間の日最低気温の平均が8℃で糖度約4.5度、2℃で約5.0度という結果でした(Brix)。
※この数値は品種「冬職人」の研究です。品種間の差は大きくなります。
甘い上の部分は、まず生のサラダで楽しんでみてはいかがでしょう。薄く切って皿に盛り、味つけをする前に少しかじってみる。今夜の献立を考えながら、大根そのものの甘さを味わうのもよさそうです。
冬の野菜は、どう選び、保存すればよいですか?
「寒締め」という育て方を、冬の甘さを楽しむ手がかりにしてみましょう。持ち帰った野菜の保存には、農研機構が示す品目ごとの最適貯蔵温度が目安になります。
冬におなじみの野菜の、保存に向く温度を並べました。
| 野菜 | 最適貯蔵温度 |
|---|---|
| ホウレンソウ | 0℃ |
| ダイコン | 0〜1℃ |
| ハクサイ | 0℃ |
| キャベツ(秋冬) | 0℃ |
| ニンジン | 0℃ |
出典:農研機構「青果物の最適貯蔵条件」。値は目安で、品種・栽培時期・産地で変わります。
よくある質問
Q. 冷蔵庫でも、寒締めのように甘くなりますか?
寒締めは収穫前の畑の寒さを利用する育て方です。家庭の冷蔵庫で同じことが起きるかは、確かめられていません。
Q. 寒締めほうれん草は、いつ頃からですか?
岩手県内の主要地点では、おおむね12月上旬です。地温が8℃以下になる日が、寒締めを始められる目安です。
Q. 大根の「抽根部」は、どこですか?
土の上に出ている、大根の上の部分です。「冬職人」の研究では、この部分の糖度がとくに高いとされています。
地球人倶楽部では、どのようにお取り扱いしていますか?
冬は、旬の葉物や根菜が産地を替えながら並びます。地球人倶楽部では、こうした冬の野菜をお取り扱いしています。
参考にした資料
- 岩手県「平成17年度試験研究成果書 寒締めほうれんそうの作期判定と生育調節技術」
https://www.pref.iwate.jp/agri/_res/projects/project_agri/_page_/002/004/810/h17shidou_31.pdf - 岡山県農林水産総合センター農業研究所「晩秋〜初冬どりダイコン品種『冬職人』の糖度と収穫前の最低気温との関係」
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/1052098_10192288_misc.pdf - 農研機構「青果物の最適貯蔵条件」
https://www.naro.go.jp/org/nfri/yakudachi/optimalstorage/index.html
(2026年10月19日に内容を確認しました)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果効能を保証するものではありません。体調や体質には個人差がありますので、気になる症状がある場合や持病のある方は、医療機関にご相談ください。