ハヤブサが消えた年。生態系ピラミッドから見える、本当の「自然を守る」ということ
COLUMN / 産地のはなし
岩手県滝沢村の「コツコランド農場」に、毎年現れていた天敵・ハヤブサが、ある年、姿を見せませんでした。「アイツはどうしたのか」——農場主とのその会話から始まった話です。
2,500羽のうち、毎年1割がハヤブサとキツネの餌食に
コツコランド農場の鶏たちは、広い牧場跡地に放し飼いされ、夜だけ鶏舎に戻ります。この自然放鶏の最大の悩みが、ハヤブサやキツネといった天敵との戦いです。常時2,500羽ほどの中から、毎年200〜250羽——全体のおよそ1割が、ハヤブサやキツネの餌食になっていました。
キツネ対策には犬を配置し、ハヤブサには線状のネットを張るなど、対策は重ねてきましたが、それでも被害は毎年続いていました。ところが、その年に限って、ハヤブサが姿を見せなかったのです。
生態系ピラミッドの頂点は、実は「一番弱い」立場
ハヤブサやオオタカ、サシバといったタカの仲間は、生態系ピラミッドの最も高い位置にいる「高次消費者」です。ピラミッドは「上に行くほど種類も数も少なく、下ほど多い」という関係を表しています。
一見、頂点にいるタカやワシは強そうに見えます。けれど生態系全体で見れば、実は「一番弱い立場」にあります。彼らが生きていくには、広大で質の高い自然そのものが必要だからです。つがいのイヌワシには約6,000ヘクタール、サシバには約50ヘクタール、オオタカには100〜200ヘクタールもの豊かな自然が必要とされています。
森の一部が失われるだけで、そこに暮らす昆虫が減り、それを食べるカエルやトンボが減り、さらに上位の生き物へと影響が連鎖していきます。山に道路を1本通すだけで生態系のつながりは崩れ、最も高い位置にいるタカやワシから、真っ先に姿を消していくのです。
「いなくなって良かった」では、済まされない
つまり、ハヤブサやイヌワシが生息しているということ自体が、質の高い豊かな自然環境が残されている証明でもあります。彼らの数が減っているというニュースの本質は、単に「守るべき生き物が減った」という話ではなく、健全な自然環境そのものが失われているという意味なのです。
ニワトリがハヤブサに襲われなくなったことは、農場にとって一見良いことのように思えます。けれど、ハヤブサが棲めなくなるほど、周囲の自然が失われていたのだとしたら——私たちはまた一つ、豊かな自然を次の世代に残せなくなったのかもしれません。
自然を大切にするということは、美しい花や緑の木々を思い浮かべるだけでは足りません。様々な生き物が有機的につながり合った、そのシステム全体を守ることです。地球人倶楽部が生産者との関係を大切にしてきたのは、こうした自然のつながりの上に、私たちの食卓があると考えているからです。
生態系とともにある食材を、まずは一箱で。
一つがいが生きるために、必要な自然の広さ
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| 猛禽類 | 必要とされる自然環境の広さ |
|---|---|
| イヌワシ | つがいで約6,000ヘクタール |
| オオタカ | 100〜200ヘクタール |
| サシバ | 約50ヘクタール |
数字にすると、頂点に立つ生きものがどれだけ広い土台の上でしか生きられないかが見えてきます。
よくある質問
Q. 生態系ピラミッドの頂点にいる生きものが「一番弱い」とは、どういう意味ですか?
A. タカやワシは一見強そうに見えますが、生きていくには広大で質の高い自然そのものが必要です。森の一部が失われれば、そこに暮らす昆虫が減り、それを食べるカエルやトンボが減り、上位の生き物へと影響が連鎖します。山に道路を一本通すだけでつながりは崩れ、最も高い位置にいる猛禽類から真っ先に姿を消していきます。
Q. ハヤブサがいなくなることは、農場にとって良いことではないのですか?
A. 農場の被害という面だけを見ればそうかもしれません。ただ、ハヤブサやイヌワシが生息していること自体が、質の高い豊かな自然が残されている証明でもあります。彼らが減ったというニュースの本質は、守るべき生き物が減ったという話にとどまらず、健全な自然環境そのものが失われているという意味を含んでいます。
Q. 放し飼いの鶏は、天敵の被害をどのくらい受けるのですか?
A. 岩手県滝沢村のコツコランド農場では、常時2,500羽ほどのうち、毎年200〜250羽——全体のおよそ1割がハヤブサやキツネの餌食になっていました。キツネ対策に犬を配置し、ハヤブサには線状のネットを張るなど対策を重ねても、被害は続いていたといいます。