「聞こえにくい」は、なぜ気づきにくいのか 加齢性難聴の特徴と、今日からできる付き合い方
COLUMN / からだのはなし
「聞こえにくい」は、なぜ気づきにくいのか
加齢性難聴の特徴と、今日からできる付き合い方
テレビの音量が大きいと言われる。会議で聞き返すことが増えた。そんな変化は、年齢とともに誰にでも起こりうるものですが、進み方がとても緩やかなため、本人が気づくころには、まわりの人の方が先に気づいていることも少なくありません。公的な研究機関の資料をもとに、加齢性難聴の特徴と、気づいたときに選べることを整理してみます。
加齢性難聴は、病気というよりも、年齢とともに誰の身にも起こりうる変化のひとつです。だからこそ「年のせい」で片づけられがちですが、聞こえにくさをそのままにしておくと、会話そのものを避けるようになり、人との関わりが少しずつ減ってしまうこともあります。まずは、どのような特徴があるのかを知ることから始めたいと思います。
1気づかないうちに進む、という特徴
東京都健康長寿医療センターの資料によれば、加齢性難聴は高音域の聴力低下が目立ちやすく、「症状は緩徐に進行することが多いため、周りの方に言われるまで難聴であることになかなか気づかない方も多い」とされています。具体的には、相手の話が聞き取りにくい、講演会の内容がわからない、テレビの音量について指摘される、といった形で表れるといいます。急に聞こえなくなるのではなく、少しずつ聞き取りにくい音が増えていくため、本人にとっては「そういうものだ」と感じられやすいのが、この難聴の特徴だといえそうです。
2年代とともに、どれくらい増えるのか
国立長寿医療研究センターの資料では、軽度以上の難聴がある人の割合は、70代前半で男性が約50%、女性が約40%、80代になると男性が約84%、女性が約73%にのぼるとされています。また、60代前半の時点で難聴がない人が10年後に難聴を発症する割合は約3割、70代前半の人では約6割にのぼるという調査結果も紹介されています。年齢を重ねるほど、聞こえの変化は自分ごとになっていくことがうかがえます。
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| 年代 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 70代前半 | 約50% | 約40% |
| 80代 | 約84% | 約73% |
出典:国立長寿医療研究センター「補聴器は何歳から必要?」(軽度以上の難聴を持つ人の割合)
3補聴器という選択肢と、使われていない現実
国立長寿医療研究センターによると、補聴器は中等度(40〜69デシベル)から高度(70〜89デシベル)の難聴の方に役立つとされ、60代後半からは聴力検査を受けることが勧められています。一方で、日本補聴器工業会が実施した調査「JapanTrak 2022」(公益財団法人テクノエイド協会共催)では、難聴を自覚している人は全体の10.0%であるのに対し、そのうち実際に補聴器を持っている人は15.2%、全人口に対しては1.5%にとどまっていました。難聴を自覚してから補聴器を持つまでの期間は、初めて購入した人のうち48%が1〜3年、31%が4〜6年かかったと答えています。聞こえにくさに気づいてから、実際の対応まで、時間がかかりやすい領域だということがわかります。
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| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 難聴を自覚している人(全体) | 10.0% |
| そのうち補聴器を持っている人 | 15.2% |
| 全人口に対する補聴器所有率 | 1.5% |
出典:日本補聴器工業会「JapanTrak 2022」(公益財団法人テクノエイド協会共催)
4気づいたときに、できること
国立長寿医療研究センター資料が紹介するWHOの認知症予防ガイドライン(2019年)は、補聴器の使用が認知症予防に役立つという根拠は十分ではないとしながらも、高齢者に対する難聴のスクリーニングと必要な介入を行うべきだとしています。効果を確約するものではなく、まず「聞こえの状態を把握する」ことそのものに意味がある、という位置づけです。テレビの音量を指摘された、会話で聞き返すことが増えた——そう感じたら、思い込みで済ませず、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けてみることが、次の一歩になります。補聴器を使う場合も、調整と装用に時間がかかるものとされているため、焦らず慣らしていく姿勢が大切です。
地球人倶楽部でのお取り扱いについて
私たちが1988年から大切にしてきたのは、食卓を囲む時間そのものです。聞こえの変化は、会話や食事の場での何気ないやりとりから気づくことも多いといいます。日々の食卓が、家族や大切な人と過ごす時間として、これからも続いていくことを願っています。
よくある質問
Q. 加齢性難聴は何歳くらいから気をつければいいですか?
国立長寿医療研究センターは、60代後半からは難聴の可能性が高まるため、聴力検査を受けることを勧めています。70代前半では男性の約50%、女性の約40%に軽度以上の難聴があるとされ、年代が上がるほど割合も高まります。
Q. 聞こえにくいと感じたら、まず何をすればいいですか?
「年のせい」で済ませず、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることが勧められています。加齢性難聴は進み方が緩やかで自覚しにくいため、家族や周囲から指摘されたことがきっかけになるケースも少なくありません。
Q. 補聴器は、どれくらいの人が使っているのですか?
日本補聴器工業会の「JapanTrak 2022」によると、難聴を自覚している人(全体の10.0%)のうち、実際に補聴器を持っている人は15.2%、全人口に対しては1.5%にとどまっています。気づいてから対応までに時間がかかりやすい領域だといえます。
本記事は東京都健康長寿医療センター・国立長寿医療研究センター・日本補聴器工業会が公表している資料をもとに、一般的な情報としてまとめたものです。聞こえ方や進行の程度には個人差があり、特定の症状や治療効果を保証するものではありません。聞こえにくさが続く場合や気になる症状がある場合は、耳鼻咽喉科など医療機関にご相談ください。