栗の渋皮は、なぜ手強いのか むきやすい新品種に見る、栗づくりの知恵
COLUMN / 季節のはなし
栗の渋皮は、なぜ手強いのか
むきやすい新品種に見る、栗づくりの知恵
栗ご飯や栗きんとんの季節になると、必ず立ちはだかるのが「渋皮むき」の手間です。鬼皮を剥いた後にもう一枚、実にぴったり張りついた渋皮が残り、指先を傷めながら格闘した方も多いのではないでしょうか。実はこの渋皮の手強さ、農業の研究機関が長年かけて向き合ってきたテーマでもあります。今日は、栗という果実の構造と、それを変えようとした品種改良の歩みをたどります。
栗は、桃やりんごのように皮をむけばすぐ食べられる果実ではありません。硬い鬼皮の内側に、繊維状の渋皮が実の表面へ深く食い込むように張りついており、この構造こそが「栗はおいしいのに面倒」と言われ続けてきた理由です。まずは、その仕組みから見ていきましょう。
1渋皮が、実にあれほど密着している理由
栗の実は、外側から鬼皮(硬い殻)・渋皮(薄皮)・可食部という三層構造になっています。渋皮は繊維質に富み、可食部の表面にあるでこぼこへ入り込むように密着して育つため、包丁で筋を入れて手でむこうとしても、実の一部ごと持っていかれてしまいます。りんごや柿のように「皮」と「果肉」がなめらかな面で接している果物とは、そもそも密着の仕方が違うのです。この構造は品種によって差があり、むきやすさの個体差を利用して新しい品種を育てようという発想が、後の研究につながっていきました。
2「ぽろたん」という、むきやすい新品種
この渋皮の悩みに正面から取り組んだのが、国の研究機関である農研機構です。同機構が育成した栗の品種「ぽろたん」は、実に小さな傷をつけてから軽く加熱するだけで、鬼皮と渋皮がまとまってするりと外れるのが特徴です。在来の日本栗どうしの掛け合わせから生まれた純粋な日本栗でありながら、渋皮の密着しにくい性質を受け継いでいる点が、それまでの中国栗由来の「むきやすい栗」とは一線を画します。実の大きさはおよそ30g前後とされ、甘みと香りも従来の品種に劣らないと紹介されています(出典:農研機構「果樹茶業研究部門」)。長年「おいしいけれど面倒」だった栗に、「おいしくて楽」という選択肢が加わったわけです。
3栗は、いつから日本にあったのか
栗と日本人の付き合いは古く、『古事記』『日本書紀』『万葉集』にもその名が登場します。なかでも丹波(現在の京都府北部・兵庫県東部)の栗は古くから名産として知られ、江戸時代には参勤交代の道を通じて各地の大名や商人に伝わり、全国へ広がっていったと紹介されています(出典:農林水産省広報誌「aff」)。品種改良が進んだ今も、栗が「秋の実り」の代表格であり続けているのは、こうした長い時間の積み重ねがあってのことです。
4栗の産地は、今どこにあるのか
令和5年産の統計では、栗の生産量は茨城県が全国の4分の1超を占め、断トツの1位です。次いで熊本県、愛媛県と続きます。
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| 順位 | 都道府県 | 生産量 | 全国シェア |
|---|---|---|---|
| 1位 | 茨城県 | 3,870t | 25.8% |
| 2位 | 熊本県 | 1,820t | 12.1% |
| 3位 | 愛媛県 | 1,570t | 10.5% |
| 4位 | 岐阜県 | 774t | 5.2% |
| 5位 | 栃木県 | 540t | 3.6% |
出典:農林水産省「作物統計」(令和5年産)
5栗に含まれる、主な栄養
栗は「木になる主食」とも呼ばれるほど炭水化物を多く含む果実で、食物繊維やカリウム、ビタミンCも含まれています。
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| 成分 | 日本ぐり(生)100gあたり |
|---|---|
| エネルギー | 147kcal |
| 炭水化物 | 36.9g |
| 食物繊維 | 4.2g |
| カリウム | 420mg |
| ビタミンC | 33mg |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
6生の栗は、意外と日持ちしない
生の栗は水分を多く含むため、常温では傷みが早く進みます。農林水産省の情報では、ポリ袋に入れて口は縛らずに折るだけにし、冷蔵庫のチルド室(0度付近)で保存する方法が紹介されていますが、それでも日持ちの目安は1週間程度とされています。まとめて手に入った場合は、早めに加熱調理するか、皮をむいてから冷凍しておくと、渋皮の手間も先に済ませられて一石二鳥です。
地球人倶楽部でのお取り扱いについて
地球人倶楽部では、契約している生産者から届く旬の果実や野菜を、季節ごとにご案内しています。栗のような秋の実りも、入荷のタイミングによって店頭・オンラインストアでご紹介することがあります。時季のものですので、詳しい入荷状況はその都度ご確認ください。
よくある質問
Q. 栗の渋皮は、なぜあんなに剥きにくいのですか?
A. 渋皮が繊維質で実の表面に強く密着している構造のためです。この密着しにくさを解消しようと生まれたのが、農研機構が育成した新品種「ぽろたん」です。
Q. 「ぽろたん」はどこでも手に入りますか?
A. 全国で栽培が広がりつつある品種ですが、従来の栗に比べると流通量はまだ限られています。産地や時期によって入荷状況が異なる点はご了承ください。
Q. 栗は保存が効きますか?
A. 生の栗は傷みやすく、農林水産省の情報によれば、冷蔵庫のチルド室で保存しても日持ちの目安は1週間程度とされています。早めに食べきるか、加熱・冷凍での保存を検討するとよいでしょう。
本記事は栗の一般的な性質や統計情報を紹介するものであり、特定の効果・効能を保証するものではありません。食物アレルギーや持病のある方は、摂取前にかかりつけ医にご相談ください。