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保存料とは何か|添加物に頼らない、昔ながらの保存の知恵

COLUMN / 保存食と発酵のはなし

保存料とは何か
添加物に頼らない、昔ながらの保存の知恵

冷蔵庫がなかった時代、人は塩と発酵で食べ物を守ってきた。

「保存料不使用」という表示を見て、なんとなく安心した経験はありませんか。でも、保存料が果たしている役割を正しく知らないまま「不使用」だけを喜ぶのは、少しもったいないことでもあります。今日は、保存料という添加物の役割から、それに頼らずに食べ物を保存してきた昔ながらの知恵、そして台風や災害への備えという視点までを、まとめてお伝えします。

結論から言うと、保存料は、食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑え、保存性を高める食品添加物です(東京都)。食品添加物には、使用基準により、使用できる食品や使用量が限られているものがあります(消費者庁)。「保存料不使用」の表示は、保存料を使っていないことを示すもので、保存性をほかの方法でどのように保っているかは、商品によって異なります。

以前のコラムで食品添加物全般の仕組みをお伝えしましたが、今回は「保存」というテーマに絞って、もう一歩踏み込みます。

1保存料とは何か

保存料は、食品添加物のうち食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑え、保存性を高める目的で使われるものを指します(東京都保健医療局)。微生物を殺すことを目的とした殺菌剤とは異なります。消費者庁の資料は、保存料の用途を「カビや細菌などの発育を抑制し、食品の保存性を向上させる」と説明しています。また食品安全委員会は、食品添加物の中には、食品中の微生物の繁殖を抑え、食中毒のリスクを減らすことに役立っているものもある、としています。

代表的な保存料には、ソルビン酸・安息香酸・しらこたん白(プロタミン)などがあります。それぞれ対象となる微生物や適した食品が異なり、用途に応じて使い分けられています。

2「保存料不使用」の裏側にあるもの

「保存料不使用」と書かれた商品が、必ずしも保存性を犠牲にしているとは限りません。保存性に関わるものとして、たとえば次のようなものがあります。

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方法 仕組み
pH調整剤 食品を適切なpH領域に保ち、品質や色を安定させる添加物。微生物が増殖できない範囲にpHを調整することで、結果として保存性が高まることがある

なお、日持ちを向上させる目的で保存料以外の食品添加物を使っているのに「保存料不使用」と表示することは、消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日)が、表示禁止事項に該当するおそれが高い例の一つ(類型4)として挙げています。このガイドラインは事業者が自己点検に使うもので、不使用表示を一律に禁止するものではありません。「保存料不使用」の表示を見たときは、一括表示欄の原材料名・添加物の表示もあわせて確認する方法があります(消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」)。

つまり「保存料不使用」は、保存料という一つの手段を使っていない、という表示です。保存性をどのように保っているかは商品によって異なり、「不使用だから何もしていない」わけではない、という点は知っておく価値があります。

3冷蔵庫がなかった時代の、保存の知恵

保存料も冷蔵技術もなかった時代、人々は経験の中から食べ物を長持ちさせる方法を編み出してきました。微生物の働きを利用する発酵のほか、塩分や乾燥によって水分を減らす方法、糖分や酢を使う方法などがあります。

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昔ながらの方法 どんな方法か 代表例
発酵 微生物の働きを利用して、食品を発酵させる ぬか漬け、味噌、醤油
塩蔵 食塩で食品から水分を抜き、貯蔵性を高める 梅干し、塩漬け野菜
乾燥 微生物の増殖に必要な水分そのものを取り除く 干し野菜、乾物、鰹節
糖蔵 糖分を使った保存 ジャム、砂糖漬け
酢漬け 酢を使った保存 ピクルス、南蛮漬け

これらの方法は、水分を減らす、微生物の働きを利用するなど、仕組みがそれぞれ異なります。家庭でつくる場合は衛生面にも気を付ける必要があります。東京都は、漬物をつくるときは手洗い、野菜の洗浄、器具や容器の消毒を行うよう案内しています。また、昔ながらの漬物は塩分濃度が10%以上でつくられていたのに対し、最近は3〜5%程度の漬物が多く、塩分濃度が低い漬物は食中毒菌が増える可能性があるため、低温で保存して早めに食べきる必要がある、としています(東京都保健医療局「食品安全FAQ」)。

4台風・災害への備えとしての「保存食」

気象庁の統計では、台風の接近数(台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300km以内に入った数)の平年値は、8月と9月がともに3.3です(1991〜2020年の30年平均。年間は11.7)。農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」は、市販の非常食に加えて、地域や家庭に伝わる保存食も家庭備蓄の一つとして紹介しています。

常温で保存しやすい食品の例

農林水産省のガイドは、備蓄食品の例として、梅干し・漬物・日持ちする野菜類、乾物、インスタントみそ汁などを挙げています。乾物は水分が抜けているため微生物の繁殖が抑えられ、常温でも保存できるとされています(農林水産省)。保存するときは、高温になりやすい場所、直射日光が当たる場所、湿気の多い場所を避け、密閉して保管します。商品の表示にある保存方法と期限も確認してください。

調理の手間が少ない

梅干しや漬物は、そのまま食べられるため、火や水が限られる状況でも副菜として取り入れやすい食品です。農林水産省のガイドも、梅干し・漬物・日持ちする野菜類を副菜の例に挙げています。ただし、塩分濃度が低い漬物は、低温で保存して早めに食べきる必要があります(東京都)。

日常使いと備蓄を分けなくていい

「非常食用」として買い置くのではなく、普段から作り置き・買い置きしている保存食が、そのまま備えになる。これは「ローリングストック」という考え方にも通じます。

ぬか床やこんにゃくづくりに挑戦することは、実は災害への備えを暮らしの一部に組み込むことでもあります。

保存料も、昔ながらの知恵も、正しく選べばいい

消費者庁は、食品添加物で保存性を向上させることで、賞味期限が延び、遠方への流通が可能になったり、食料資源のムダをなくせたりする、と説明しています。一方で、発酵・塩蔵・乾燥といった昔ながらの方法は、手間はかかりますが、添加物を使わずに食品を保存する知恵でもあります。

地球人倶楽部では、こうした知恵を、忙しい毎日の中でも取り入れやすい形でお伝えしたいと考えています。「保存料不使用」を選ぶことと、「保存料に頼らない暮らし方」を知ることは、似ているようで少し違います。どちらも知ったうえで、自分に合う方法を選んでいただければと思います。

よくある質問

Q. 発酵食品は、保存料入りの食品より安全ですか?

A. 「安全性が高い・低い」という単純な比較はできません。発酵食品は正しい塩分濃度や衛生管理のもとでつくることが前提です。管理が不十分だと、かえって傷みやすくなることもあるため、手順を守ることが大切です。

Q. 保存食を非常食として備える場合、何日分くらい用意すればいいですか?

A. 農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」は、最低3日分から1週間分を人数分備蓄することが望ましいとされている、と紹介しています。普段の食品を少し多めに買い置きし、古いものから消費して、消費した分を買い足す「ローリングストック」という方法も紹介されています。

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情報源:
・東京都保健医療局「食品衛生の窓:用途別 主な食品添加物 保存料」
・消費者庁「食品添加物表示に関するマメ知識」
・消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日)
・内閣府 食品安全委員会「『食の安全ダイヤル』に寄せられた質問等Q&A(化学物質系)」
・東京都保健医療局「食品安全FAQ:自家製の漬物をつくるときに気を付けることはありますか?」
・農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
・農林水産省「塩漬け」(にっぽん伝統食図鑑)、aff 2019年9月号「乾物」
・気象庁「台風の平年値」

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