NEWS

コラム

うなぎは、どこから来るのか ― 絶滅危惧種・稚魚の密漁・産地偽装。国内流通のいま

COLUMN / 食のはなし

重箱に盛られたうなぎの蒲焼き
当たり前に並ぶ一尾。その背景を、少しだけ。

夏になると、当たり前のように売り場に並ぶうなぎ。けれど「その一尾がどこから来たのか」を説明できる方は、多くないかもしれません。実はうなぎは、日本の食のなかでもとりわけ複雑な事情を抱えた食材です。

この記事では、憶測ではなく公的機関や研究機関が公表している情報をもとに、うなぎの国内流通の現在地を整理します。出典は記事末にまとめました。

1「養殖うなぎ」は、天然の稚魚から育てられている

まず、多くの方が意外に思われる事実から。

日本で消費されるうなぎの99%以上は養殖です。ここまでは、ご存じの方も多いでしょう。けれどその養殖は、「シラスウナギ」と呼ばれる天然の稚魚を海や川で捕まえてきて、育てるという仕組みで成り立っています(出典①)。

卵から育てる「完全養殖」の技術は研究が進んでいますが、商業ベースでは実現していません。つまり私たちが食べているうなぎは、養殖と呼ばれていても、その出発点はすべて天然資源なのです。

この構造が、これから述べるすべての問題の根っこにあります。

2ニホンウナギは、絶滅危惧種である

スーパーに山積みになっている姿からは想像しにくいのですが、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されています

環境省が2013年に、国際自然保護連合(IUCN)が2014年に、それぞれ絶滅危惧ⅠB類(EN)に区分しました。1970年代と比べて、資源量は大きく減少していると考えられています(出典①②)。

絶滅危惧ⅠB類(EN)とは

「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」とされる区分です。食用として大量に流通している生き物が、同時に絶滅危惧種でもある――うなぎは、そういう稀な存在です。

3稚魚の流通は、なぜ「不透明」と言われるのか

ここが、うなぎ問題の核心です。

シラスウナギは体長5〜6センチほどの透明な稚魚で、冬から春にかけて河口に集まります。数が減り、価格が高騰した結果、一部では「白いダイヤ」とも呼ばれるほどの高値で取引されるようになりました。

その結果として指摘されているのが、採捕と流通の不透明さです。WWFジャパンは、シラスウナギの採捕・流通には不透明な部分が多く、密漁や密売が横行していると言われていると指摘しています(出典①)。

つまり、店頭に並ぶうなぎの「出発点」が、どこで誰にどう採られたものなのか――そこが追いきれない。それが現状です。

42024年のDNA調査が示した、「種」の問題

2024年、WWFジャパンと中央大学が、全国のスーパーや百貨店で購入したかば焼きをDNA分析した結果を発表しました。ここで明らかになったのは、産地だけでなく「種」そのものの問題でした(出典③)。

調査対象 結果
全体 約6割がニホンウナギ、約4割がアメリカウナギ
「国産」表示
51点
すべてニホンウナギ
「中国産」表示
82点
半分以上がアメリカウナギ

日本の食品表示制度では、うなぎの「種」までは表示が求められていません。「中国産」と書かれていても、それが東アジアのニホンウナギなのか、大西洋を回遊するアメリカウナギなのかは、パッケージからは分からないのです。

そしてアメリカウナギもまた、資源状況が懸念されている種です。国際取引のあり方について、議論が続いています(出典④)。

5繰り返されてきた、産地偽装

うなぎは、産地偽装の代表格とも言われてきました。輸入品を国産と偽って販売する事件が、繰り返し起きています(出典⑤)。

理由は単純で、国産と輸入品の価格差が大きいから。ラベルを貼り替えるだけで利幅が変わる構造があるかぎり、動機はなくなりません。そして一度偽装が発覚した食材ほど、繰り返し標的になりやすいと指摘されています。

6それでも、制度は動きはじめている

ここまで課題ばかりを挙げてきましたが、状況は改善に向かってもいます。

2020年に改正された漁業法と、新たに成立した水産流通適正化法が、流通の透明化に向けた糸口として期待されています(出典①)。さらに水産庁は、漁獲番号で取引記録を追跡する漁獲証明制度の対象魚種に、シラスウナギを含める方針を決めました(出典②)。

「どこで採られ、どこを通って店に並んだか」を追えるようにする。トレーサビリティという言葉が、うなぎの世界でもようやく現実の制度になりつつあります。

私たちが、食材と向き合うときに考えること

この記事は「うなぎを食べるのをやめましょう」という話ではありません。土用の丑の日を大切にしてきた食文化には、確かな価値があります

お伝えしたかったのは、ひとつだけです。「どこから来たか分からない」ということ自体が、ひとつのリスクだということ。それは安全性の問題であると同時に、資源を次の世代に残せるかどうかの問題でもあります。

1988年の創業から37年、私たちが一貫して「誰が、どこで、どう育てたか」にこだわってきたのは、そのためです。産地と直接向き合い、つくり手の顔が見える食材だけを選ぶ。手間はかかりますが、それ以外に確かめる方法がないと考えています。

野菜における「有機JAS」「特別栽培」といった表示の見方についても、別のコラムで整理しています。どの食材でも、考え方の基本は変わりません。

出典

WWFジャパン「シラスウナギの不透明な流通とその改善に向けて」

中央大学 海部研究室「ニホンウナギは絶滅するのか」/水産庁 漁獲証明制度に関する報道

共同通信「ウナギ、国内販売の4割は北米種 稚魚の違法取引に懸念」(WWFジャパン・中央大学によるDNA分析/2024年)

日本自然保護協会「ウナギの国際取引の議論に注目を」

マネーポストWEB「食品の産地偽装の代表格は『うなぎ』」

※本記事は各機関の公表情報にもとづく整理であり、特定の商品の安全性を評価するものではありません。

SPECIAL OFFER

「誰が、どう育てたか」が
分かる食材を。

季節の野菜と果物、平飼い卵、神山鶏、飛騨コシヒカリ、
シェフ監修のお料理まで。地球人倶楽部の”いつも”を、ひと箱に。

8,800円相当2,980円(税込・送料無料)

特別ご優待セットを見る※お一家庭1回限り/送料無料は自社便エリアに限ります

TOPへ戻る