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ネオニコチノイド系農薬とは何か。野菜の見分け方と、食卓で今日からできること

COLUMN / たべものの話

ネオニコチノイド系農薬とは何か
野菜の見分け方と、食卓で今日からできること

わかっていることと、まだ議論の途中にあることを、分けて考える。

ミツバチへの影響、EUでの規制強化、人への影響についての研究報告——断片的な情報は増えていますが、科学的に確認されていることと、まだ研究途上にあることが混ざって伝えられていることも少なくありません。公的機関の情報をもとに、できるだけ正確に整理します。

スーパーの棚に並ぶ野菜を見て、「これは安全なのだろうか」と思ったことはあるでしょうか。産地表示や価格を見ても、その野菜にどんな農薬が使われているかはわかりません。「減農薬」と書かれていても、それが何を意味するのかは曖昧なままです。

1ネオニコチノイド系農薬とは何か

ネオニコチノイド系農薬は、ニコチンと似た構造を持つ殺虫剤の総称です。害虫の神経伝達を遮断し、麻痺などを起こして死に至らせる仕組みだと、食品安全委員会が説明しています。日本では7成分が農薬として登録されており、野菜、果樹、稲などに幅広く使われています(食品安全委員会「食品安全」Vol.62、2025年10月)。農薬は、農林水産省が登録したものだけを、定められた使用方法で使うことができます。

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項目 内容
代表的な成分 アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム(日本で登録されているのは7成分。成分名は農林水産省の2016年の資料による)
浸透性 浸透移行性が高い。作物の表面にとどまる農薬と異なり、植物に取り込まれて葉・花・根・茎などに運ばれる(食品安全委員会、欧州委員会)
洗って落ちるか 農薬が作物の表面に付いているのか、内部に入っているのか、作物の表面の凹凸や毛、ワックス層の違いなどによって、洗浄で取れる程度は変わる(東京都健康安全研究センターの解説)

食品安全委員会は、ネオニコチノイド系農薬は浸透移行性が高いと説明しています。欧州委員会も、作物の表面にとどまる接触性の農薬と異なり、植物に取り込まれて全体に運ばれると説明しています。洗って落ちるかどうかは、農薬の性質や付き方によって変わります。

2わかっていること、議論中のこと

ミツバチなど花粉媒介昆虫への影響については、機関によって示し方が異なります。欧州委員会は、2018年5月30日に官報に公示した規則で、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3成分の屋外での使用を禁止し、使えるのは恒久的な温室内に限っています。一方、農林水産省は、2013〜2015年度の被害事例調査で、蜜蜂の被害の原因となった殺虫剤を特定することはできなかったとしています。また、日本では蜂群崩壊症候群(CCD)は報告されていないと説明しています(2016年改訂)。

一方、人への影響については、研究によって結果が異なります。国立環境研究所のエコチル調査コアセンターは2023年11月、8,538組の母子のデータを解析し、妊娠中の母親の尿中のネオニコチノイド系農薬等の濃度と、4歳までの子どもの発達指標(保護者が記入した質問票)との間に、統計学的な関連は見られなかったと発表しました。同研究所は、一つの疫学調査の結果だけでは十分な証拠とはいえず、さらなる調査が必要だとも述べています。また、食品安全委員会は、国内外で、子どもの神経系が急速に発達する胎児期から若齢期への影響(発達神経毒性)を懸念する意見があると説明しています。

EFSA(欧州食品安全機関)は、2024年3月27日に採択した声明で、アセタミプリドの発達神経毒性に関する証拠には大きな不確実性があり、より確かな評価にはさらなるデータが必要だとしました。そのうえで、許容一日摂取量(ADI)と急性参照用量(ARfD)を、0.025から0.005 mg/kg体重(ADIは1日当たり)へ引き下げることを提案しています。欧州委員会は、これを受けて承認の見直しを始めています(EFSA、2025年9月30日の声明)。日本の食品安全委員会でも、アセタミプリドは再評価中で、2026年10月5日時点で結果通知の記載はありません。

このコラムの立場:人への健康影響については、「リスクが証明されている」とも「安全が証明されている」とも、このコラムでは言い切りません。公的機関ごとの評価や基準を、機関名をつけて並べます。食材を選ぶときの判断材料にしてください。

3国や地域で、残留基準はどう設定されるか

日本では、食品安全委員会が許容一日摂取量(ADI)などを評価し、その範囲で消費者庁が食品ごとに残留基準を設定しています。基準を超えて残留する食品の販売や輸入は、食品衛生法で禁止されています。消費者庁は、食品中の農薬の残留基準値は、定められた使用方法で使った際の残留濃度等に基づいて設定すると説明しています。国ごとに農薬の使用の可否や使用方法、気候、病害虫の発生状況が異なるため、基準値も異なります。そのため消費者庁は、日本と海外の基準値のどちらが緩いか厳しいかを一概に言うことはできないとしています。

EUは、花粉媒介昆虫の保護を目的として、クロチアニジンとチアメトキサムの残留農薬基準値(MRL)を、検出限界まで引き下げる規則(規則(EU)2023/334)を2023年に定めました。この規則は2026年3月7日から、EU域内産だけでなく輸入農産品にも適用されています。規則は、従来の基準値は消費者にとって安全と評価されていたとしたうえで、環境面の配慮から引き下げるとしています。

4どんな作物に使われているのか

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作物 公的資料の記述
水稲(米) カメムシの防除に使われる。水稲のカメムシ防除でネオニコチノイド系が使われた割合は、散布延べ面積ベースで約63%(2012年度、農林水産省植物防疫課調べ)
稲・果樹・野菜 カメムシ、ウンカ、アブラムシ、コナジラミ、ハモグリガなどの防除に使われる(農林水産省Q&A、2016年改定。イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフランの4成分について)
作物ごとの登録・基準 成分ごとの登録作物は農林水産省の農薬登録情報提供システムで、食品ごとの残留基準は消費者庁が案内する基準値データベースで確認できる

「減農薬」という表示について:農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、「無農薬」「減農薬」の表示は表示禁止事項とされています。「減農薬」は、何と比べて、どれだけ、何を減らしたのか(使用回数なのか残留量なのか)が不明確で、消費者にわかりにくいためです(同ガイドラインQ&A)。「減農薬」という言葉だけでは、ネオニコチノイド系農薬を使っているかどうかはわかりません。

5食卓で、今日からできること

① 有機JAS認証を確認する。有機JASの規格(農林水産省)は、化学的に合成された肥料や農薬の使用を避けることを基本とし、害虫の防除は耕種的・物理的・生物的な方法で行うと定めています。やむを得ない場合に使える農薬は、規格の附属書に挙げられたものに限られ、その中にネオニコチノイド系の成分名は載っていません。なお、特別栽培農産物のガイドラインでは、「無農薬」「減農薬」の表示は禁止され、農薬を使っていない場合は「農薬:栽培期間中不使用」と表示することとされています(農林水産省)。この違いを知っておくと、表示を読み分けやすくなります。

② 生産者や栽培の情報が具体的に示されているかを確認する。有機JAS認証を持っていなくても、農薬を使わずに栽培している生産者はいます。自己申告だけでなく、「どの農家が、どの農地で、どのような農法で」という情報が具体的に示されているかどうかが、一つの手がかりになります。特別栽培農産物であれば、使った農薬の資材名・用途・回数を、容器・包装の表示やインターネットなどで確認できます(農林水産省)。

③ 作物ごとの基準や登録を調べる。食品ごとの残留基準は、消費者庁が案内する「基準値データベース」で検索できます。作物ごとの農薬の登録内容は、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認できます。

地球人倶楽部の農産物の扱い

食品安全委員会は、日本では7成分が登録されていると説明しています(2025年10月)。登録された農薬は15年ごとに再評価されます。食品安全委員会は、イミダクロプリド(2025年7月16日)、クロチアニジンとチアメトキサム(2026年6月10日)、ジノテフラン(2026年7月29日)の評価結果を通知しており、アセタミプリドは2026年10月5日時点で結果通知の記載がありません。EUでは、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの屋外使用が禁止され、クロチアニジンとチアメトキサムの引き下げた残留基準が2026年3月7日から適用されています。

地球人倶楽部は、1988年創業の会員制の食材宅配です。農産物は、農林水産省のガイドラインに沿った基準を満たしたものと、当社の基準を満たしたものを扱っています。栽培方法は「有機JAS」「無」「特別栽培」「低」の4種類の表記で確認できます。表記の違いは有機栽培・特別栽培・無農薬・低農薬の違いで解説しています。

よくある質問

Q. ネオニコチノイド系農薬は、洗えば落ちますか?

A. 洗って落ちるかどうかは、農薬の性質や、作物の表面に付いているのか内部に入っているのかなどによって変わります。食品安全委員会は、ネオニコチノイド系農薬は浸透移行性(植物に取り込まれて移行する性質)が高いと説明しています。東京都健康安全研究センターの解説(日本調理科学会誌、2009年)は、洗浄で取れる程度は、農薬が表面に付着しているか内部に浸透しているか、作物の表面の凹凸や毛、ワックス層の違いなどで変わると述べています。

Q. 「減農薬」と書かれていれば、ネオニコチノイドは使われていないのですか?

A. 「減農薬」という言葉だけでは、使われている農薬の種類はわかりません。農林水産省のガイドラインでは、何をどれだけ減らしたのかが不明確なため、「減農薬」は表示禁止事項とされています。栽培方法を確かめるには、「有機JAS」の認証や、「特別栽培農産物」の表示(節減対象農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量が、地域の慣行の50%以下)などを見る方法があります。

Q. 日本と海外では、規制はどう違いますか?

A. 残留基準は国ごとに設定され、消費者庁は、日本と海外の基準値のどちらが緩いか厳しいかを一概に言うことはできないと説明しています。EUは、2018年5月30日に官報に公示した規則で、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの屋外使用を禁止しました。また、クロチアニジンとチアメトキサムの残留基準を検出限界まで引き下げ、2026年3月7日から輸入農産品にも適用しています。日本では、食品安全委員会の評価を踏まえて、消費者庁が食品ごとに残留基準を設定しています。

参考にした資料

食品安全委員会「食品安全 Vol.62」(2025年10月)/食品安全委員会 評価書情報(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、アセタミプリド)/消費者庁「食品中の残留農薬等」および同FAQ/国立環境研究所「母親の尿中ネオニコチノイド系農薬等濃度と子どもの発達との関連について——エコチル調査」(2023年11月14日)/EFSA(欧州食品安全機関)「Statement on the toxicological properties and maximum residue levels of acetamiprid and its metabolites」(EFSA Journal 2024;22(5):e8759、2024年3月27日採択)/EFSA声明(2025年9月30日、EFSA Journal 2025;23(9):e9639)/欧州委員会 規則(EU)2023/334(2023年2月2日)/欧州委員会 Food Safety「Neonicotinoids」/農林水産省「農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(Q&A)」(2016年11月改定)/同「蜜蜂被害事例調査」(2016年7月)/同「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」「同Q&A」/同「有機農産物の日本農林規格(JAS 1605:2024)」/永山敏廣「食品中の残留農薬―残留農薬は調理加工により減少するか―」日本調理科学会誌42(2)、2009年
(2026年10月5日に内容を見直しました)

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※本記事は、農薬と食品表示に関する一般的な情報を、公的機関の公表資料をもとに整理したものです。医療上のアドバイスや特定の診断・治療を推奨するものではありません。農薬規制の基準値は改定されることがあります。最新情報は各機関の公式情報をご確認ください。

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