おはぎと、ぼたもち 同じ菓子が、季節で名を変える理由
COLUMN / たべものの話
おはぎと、ぼたもち
同じ菓子が、季節で名を変える理由
春に食べれば「ぼたもち」、秋に食べれば「おはぎ」。同じものなのに、なぜ呼び名が変わるのでしょうか。しかも、この菓子には夏と冬の名前まであります。農林水産省が紹介している和菓子の話をたどっていくと、日本人が小豆という豆に何を託してきたのかが見えてきます。
彼岸が近づくと、店先に小豆の菓子が並びはじめます。子どものころ、祖母がつくったものを仏壇に供えてから食べた——そんな記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。当たり前のように並ぶこの菓子には、思いのほか長い物語があります。
1今年の秋の彼岸は、九月二十日から
彼岸は、春分・秋分の日を「中日(ちゅうにち)」として、その前後三日ずつを合わせた七日間を指します。国立天文台の暦要項によれば、二〇二六年の秋分は九月二十三日の午前九時五分。太陽が黄経百八十度の点を通過する、その瞬間です。
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| 区分 | 2026年の日付 |
|---|---|
| 彼岸入り | 9月20日(日) |
| 中日(秋分の日) | 9月23日(水・祝) |
| 彼岸明け | 9月26日(土) |
出典:国立天文台「暦要項(令和8年)」
秋分の日は、太陽が真東から昇って真西に沈む日です。西のかなたに極楽浄土があると考えられていたことから、この日は彼方の岸——彼岸がもっとも近づく日とされました。先祖を思う行事が、天文の動きに結びついている。ずいぶん古い時代から、人は空を見て暮らしの節目を決めてきたのだと感じます。
2ひとつの菓子に、四つの名前
農林水産省は、ぼたもちとおはぎの呼び分けについて、漢字で書くと「牡丹餅」と「お萩」になることから、春と秋の花に見立てたという説を紹介しています。春は牡丹、秋は萩。どちらも小豆の粒を花に重ねた名前です。
おもしろいのは、夏と冬にも名前があることです。夏は「夜船(よふね)」、冬は「北窓(きたまど)」。こちらは花ではなく、言葉遊びから生まれた呼び名とされています。
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| 季節 | 呼び名 | 由来とされる話 |
|---|---|---|
| 春 | ぼたもち(牡丹餅) | 牡丹の花に見立てた |
| 夏 | 夜船(よふね) | 「搗(つ)き知らず」を「着き知らず」にかけた言葉遊び |
| 秋 | おはぎ(お萩) | 萩の花に見立てた |
| 冬 | 北窓(きたまど) | 同じく「搗き知らず」を「月知らず」にかけた言葉遊び |
出典:農林水産省「春の和菓子ぼたもち」(和ごはん・ニッポン食文化)
この菓子は、餅のように米をつききらずに半分ほど残してつくります。だから「搗き知らず」。そこから、夜に着く船はいつ着いたかわからないので「着き知らず」、北向きの窓からは月が見えないので「月知らず」——と洒落を重ねていったわけです。菓子ひとつに四季の名を与えてしまう、その遊び心には感心させられます。
3なぜ、小豆だったのか
数ある豆のなかで、なぜ小豆が選ばれたのか。農林水産省は、あずきの赤い色には邪気を払い、災難から身を守る意味があると説明しています。赤は古くから、力のある色とされてきました。
もうひとつ、砂糖の存在があります。この風習が定着した江戸時代、砂糖はたいへん貴重なものでした。その砂糖をたっぷり使った菓子を供えることで、感謝の気持ちを表したのだといいます。いまでこそ気軽に買えますが、もとは「いちばん贅沢なものを、先に供える」という行いだったわけです。
赤い豆で災いを払い、貴重な甘みで感謝を示す。彼岸の菓子は、そのふたつを重ねた形をしています。
4こしあんか、粒あんか
呼び分けについては、もうひとつ説があります。農林水産省は、こしあんでつくったものがぼたもち、粒あんのものがおはぎという説も紹介しています。
ただ、どちらの説も「こう呼ぶのが正しい」と決められたものではありません。地域によって呼び方は違いますし、家によっても違います。母がおはぎと呼んでいたから、秋でも春でもおはぎ——それで一向にかまわないのだと思います。
呼び名が四つもあること自体が、この菓子が長いあいだ、あちこちの家で作られ続けてきた証しなのでしょう。
地球人倶楽部でのお取り扱いについて
地球人倶楽部では、国内の契約産地から届く小豆ともち米をご用意しています。豆から炊けば時間はかかりますが、火にかけているあいだ台所に広がる香りは、出来合いのものでは味わえないものです。彼岸の入りに合わせて、台所に立ってみるのもよいかもしれません。
よくある質問
Q. おはぎとぼたもちは、何が違うのですか。
A. 基本的には同じ菓子です。農林水産省は、漢字で「牡丹餅」「お萩」と書くことから春と秋の花に見立てたという説と、こしあんがぼたもち・粒あんがおはぎという説の両方を紹介しています。地域や家庭によって呼び方は異なり、どちらが正しいという決まりはありません。
Q. 2026年の秋の彼岸はいつですか。
A. 9月20日(日)が彼岸入り、9月23日(水・祝)が中日となる秋分の日、9月26日(土)が彼岸明けです。国立天文台の暦要項では、2026年の秋分の瞬間は9月23日午前9時5分とされています。
Q. 夏と冬にも呼び名があると聞きました。
A. 夏は「夜船」、冬は「北窓」と呼ばれていました。この菓子は米をつききらずに作ることから「搗(つ)き知らず」といい、そこに「着き知らず(夜の船はいつ着いたかわからない)」「月知らず(北の窓からは月が見えない)」を掛けた言葉遊びとされています。
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※本記事は食文化に関する一般的な情報をまとめたもので、効果・効能を保証するものではありません。日付は国立天文台「暦要項(令和8年)」、呼び名と由来は農林水産省の公表資料によります。呼び名や風習には地域差があります。