アイガモとコイが田んぼで働く。合鴨(あいがも)農法のデメリットと、私たちが大切にしてきたこと
COLUMN / 産地のはなし
新潟県津南町の生産者・鶴巻さんの田んぼには、除草剤の代わりにアイガモとコイが働いています。ある年の稲刈りにお伺いしたときの記録です。
草との戦いを、生き物に手伝ってもらう
お米づくりの最大の難関は、雑草との戦いです。稲そのものは強い植物なので、極端な冷夏でもない限り順調に育ちます。けれど、除草剤を使わない有機栽培では、草取りに大変な労力がかかります。
鶴巻さんは、除草剤の代わりにアイガモとコイを味方にしています。5月の終わり、田植えのあとの水田にアイガモとコイを放つと、二羽(二匹)は水草を食べながら田んぼの隅々を回り、草取りを担ってくれます。コイは水田にそのまま棲みつきますが、カモは天敵(キツネ、イタチ、猛禽類など)に狙われるため、毎晩、家族の手で小屋へ移動させる必要があります。
合鴨農法のデメリット:収穫量は6〜7割ほど
正直にお伝えすると、この方法には明確な弱みがあります。収穫量が、一般的な栽培の6.5〜7割程度にとどまるのです。アイガモもコイも、すべての雑草を除草剤のようには取りきれません。取り残された草にも土壌の養分が回り、その分収穫が目減りします。
理由はそれだけではありません。お米が実ってくると、草取り名人のアイガモも穂をついばみ始めます。本来ならその時期にアイガモを田んぼから出すべきですが、鶴巻さんは「アイガモにも少しは分け前をやらんとな」と、そのままにしていました。稲刈りも地域で最も遅い時期に行うため、雀などの野鳥にとっても格好の餌場になります。
量より質を大切にする。人間の都合ではなく、稲や生き物たちの理屈に合わせる。それが、収穫量が伸びない一番の理由でした。
大きくなったアイガモを、どうするか
合鴨農法には、もうひとつ大きな課題があります。大きく育ったアイガモの扱いです。稲の穂を食べるようになったアイガモは、通常その時点で役目を終え、業者の手に渡ります。情が移った生産者にとって、これは決して軽い話ではありません。
当時、鶴巻さんと話していたのは、アイガモを1年で終わらせず、育てる場所(カモセンター)を作れないかという構想でした。そこで卵を産んでもらい、孵化させ、子ガモにまた活躍してもらう。高齢化が進む生産者の労力を、カモの力で支えられないかという発想です。
量より質、を選ぶということ
一般的な栽培なら反あたり11〜12俵のところ、鶴巻さんの田んぼは8俵ほど。それでも鶴巻さんが合鴨農法を選び続けていたのは、量より質を尊重する品種を選び、無理な栽培をしないというポリシーがあったからです。人間の都合に合わせた栽培ではなく、稲の生理に合わせた栽培を選ぶなら、12俵ではなく8俵の方が、むしろ自然なのだと思う——そう話してくれました。
新潟県津南町は、魚沼のコシヒカリでも知られる、お米づくりに適した中山間地です。水源に近く、森林のミネラルを含んだ水、昼夜の寒暖差——お米づくりの好条件が揃っています。一方で、生産者の高齢化と後継者不足は、この地域に限らない有機栽培の共通課題でもありました。
除草剤に頼らず、生き物の力を借りて米をつくる。手間はかかり、収穫量も伸びません。それでも、こうした生産者との関係を大切にすることが、地球人倶楽部が創業以来続けてきた「誰が、どう育てたか」にこだわる姿勢の原点にあります。
合鴨農法の、良いところと難しいところ
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| 観点 | 合鴨農法 |
|---|---|
| 除草 | アイガモとコイが水草を食べ、除草剤の代わりを務める |
| 収穫量 | 一般的な栽培の6.5〜7割程度にとどまる |
| 手間 | カモは天敵に狙われるため、毎晩小屋へ移動させる必要がある |
| 実りの時期 | 穂が出るとアイガモが稲をついばみ始める。稲刈りも遅くなり、野鳥の餌場にもなる |
| 最大の課題 | 役目を終えたアイガモをどうするか。生産者にとって軽い話ではない |
よくある質問
Q. 合鴨農法とは、どういう方法ですか?
A. 田植えのあとの水田にアイガモ(とコイ)を放し、水草を食べてもらうことで除草剤を使わずに草取りを行う米づくりの方法です。生き物の力を借りて、田んぼの管理を成り立たせる仕組みです。
Q. 合鴨農法のデメリットは何ですか?
A. 収穫量が一般的な栽培の6.5〜7割程度にとどまることが最も大きな点です。アイガモもコイも除草剤のように雑草を取りきれず、残った草にも養分が回ります。また、穂が出るとアイガモが稲をついばみ始めること、天敵から守るため毎晩小屋へ移動させる手間がかかることも挙げられます。
Q. 役目を終えたアイガモは、どうなるのですか?
A. 稲の穂を食べるようになった時点で役目を終え、通常は業者の手に渡ります。長く世話をしてきた生産者にとっては、決して軽い話ではありません。合鴨農法を語るうえで避けて通れない部分です。
こうした生産者の物語がある食材を、まずは一箱で。