野菜の種は、どこから来るのか 固定種・在来種とF1種の違いを、正しく知る
COLUMN / たべものの話
野菜の種は、どこから来るのか
固定種・在来種とF1種の違いを、正しく知る
スーパーに並ぶ野菜の姿かたちが、どれもよく似ているのはなぜか。反対に、産地の直売所で見かける野菜が、ひとつずつ違う顔をしているのはなぜか。その答えの多くは、畑ではなく「種」にあります。
「F1種は危険」「固定種でなければ本物ではない」——種をめぐっては、そんな言葉を目にすることがあります。ですが、実際のところはもう少し込み入っていて、そして、もう少し面白い話です。今日は、固定種・在来種・F1種の違いと、二〇二二年に変わった種のルールについて、事実に沿って整理してみます。
1F1種・固定種・在来種、何が違うのか
まず、言葉の整理から。F1種(一代交配種)は、性質の異なる親どうしをかけ合わせてつくられる、一代限りの品種です。両親の良いところが強く出やすく、大きさや収穫時期がそろいやすいという特徴があります。ただし、そこから採った種を翌年まくと、性質がばらけてしまいます。
固定種は、何世代も選抜を重ねて性質を安定させた品種です。採った種をまけば、おおむね同じ野菜が育ちます。そのなかでも、特定の土地で長く受け継がれ、その土地の気候に馴染んできたものを在来種と呼びます。地域の名前がついた野菜——加賀野菜、京野菜、といった呼び名を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
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| F1種(一代交配種) | 固定種・在来種 | |
|---|---|---|
| つくり方 | 異なる親をかけ合わせた一代目 | 選抜を重ねて性質を安定させたもの |
| そろい方 | 形・大きさ・収穫期がそろいやすい | 一つひとつに個体差が出やすい |
| 翌年の種取り | 性質がばらけるため向かない | 採った種から同じ野菜が育つ |
| 主な出番 | 安定供給が求められる流通の現場 | 地域の食文化、家庭菜園、小規模な有機農家 |
2「F1種は危険」は、本当なのか
ここは、はっきりお伝えしておきたいところです。F1種は、人の手で品種どうしをかけ合わせた「交配」によって生まれたもので、遺伝子組換えとはまったく別の技術です。交配そのものは、江戸時代の園芸から続く、ごく伝統的な育種の手法でもあります。F1であることを理由に、その野菜が体に悪いという科学的な根拠は示されていません。
では、なぜ種の話がこれほど語られるのか。それは安全性ではなく、多様性と、受け継ぎやすさの問題だからです。F1種は毎年あたらしく種を買う必要があり、種をつくる技術は一部の種苗会社に集まっていきます。一方で、その土地でしか育たない在来種は、誰かが作りつづけなければ、そこで途絶えます。減っていくのは栄養ではなく、選択肢のほうなのです。
私たちがお取り扱いしている野菜にも、F1種はあります。それを隠すつもりはありません。大切なのは種の種類そのものより、どんな土で、どんな育て方をされたかだと考えているからです。そのうえで、在来種を守りつづける生産者の野菜が食卓に届く回路も、細くても保っておきたい。両方が本音です。
3種のルールは、二〇二二年に変わった
もうひとつ、知っておくと見通しがよくなる話があります。二〇二〇年に改正された種苗法です。農林水産省は、品種を大きく二つに分けて説明しています。
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| 区分 | 中身 | 自家増殖(種取り) |
|---|---|---|
| 登録品種 | 新たに開発され、品種登録を受けている品種(育成者権がある) | 二〇二二年四月一日以降、個人的・家庭的な利用を除き、育成者権者の許諾が必要 |
| 一般品種 | 在来種、これまで品種登録されたことがない品種、育成者権の存続期間が満了した品種 | 誰でも自由に利用できる |
出典:農林水産省「種苗法に関する一般的なご質問」
改正当時、「在来種の種取りができなくなる」という話が広がりました。実際には、許諾が必要になるのは登録品種であって、在来種をはじめとする一般品種は、これまでどおり自由に使えます。ご自宅の家庭菜園で採った種をまくことも、個人的・家庭的な利用にあたります。誤解が独り歩きしやすい話なので、ここは正確に押さえておきたいところです。
4それでも、誰かが種をつないでいる
在来種は、手がかかります。大きさがそろわず、収穫の時期もばらつく。市場の規格には、正直なところ向いていません。それでも守られてきたのは、その土地の食べ方と結びついているからです。この土地の水で、この土地の漬け方で、いちばんおいしくなる——そういう理由で、百年単位で受け継がれてきた種があります。
野菜の顔がふぞろいであることは、欠点ではなく、来歴のあらわれです。箱を開けたとき、大きさの違う人参が並んでいたら、そういう育ち方をしたのだと思っていただけたら嬉しく思います。
地球人倶楽部でのお取り扱いについて
地球人倶楽部では、全国の契約農家から、毎週その時期にいちばんおいしい旬の有機野菜をお届けしています。品種は畑ごとにさまざまで、在来種や固定種が入る週もあります。産地と品種が毎週入れ替わることそのものが、多様性を食卓に運ぶいちばん確実な方法だと考えています。
よくある質問
Q. F1種の野菜は、体に悪いのでしょうか?
A. F1種は異なる品種をかけ合わせた交配によって生まれたもので、遺伝子組換えとは別の技術です。F1であること自体が健康上の問題につながるという科学的な根拠は示されていません。種をめぐる議論の中心は、安全性ではなく品種の多様性や種を受け継ぐしくみにあります。
Q. 固定種と在来種は、どう違いますか?
A. 固定種は、選抜を重ねて性質を安定させ、採った種から同じ野菜が育つ品種のことです。そのなかでも特定の土地で長く受け継がれ、その土地の風土に馴染んできたものを在来種と呼びます。在来種は固定種の一部と考えると分かりやすいでしょう。
Q. 種苗法が変わって、種取りはできなくなったのですか?
A. 許諾が必要になったのは登録品種です。農林水産省によれば、二〇二二年四月一日以降、登録品種の種苗を生産する行為には、個人的・家庭的な利用を除き育成者権者の許諾が必要になりました。一方、在来種やこれまで品種登録されたことがない品種などの一般品種は、これまでどおり誰でも自由に利用できます。
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※本記事は、品種と種苗制度に関する一般的な情報を紹介するものです。制度の詳細や最新の運用については、農林水産省の公表資料をご確認ください。