レシピ からだのはなし English
旅と養生 VOL. 26 — VIETNAM

3対1で仕込んだ樽が、
幻の一番搾りを生む

ベトナム、フーコック島の木樽で仕込まれる魚醤
木樽で仕込まれる魚醤(イメージ)

ベトナム南端に浮かぶフーコック島には、大きな木樽がずらりと並ぶ光景がある。中で仕込まれているのは、東南アジアの食卓に欠かせない魚醤「ヌクマム」である。

製法はいたってシンプルだ。カタクチイワシと塩をおよそ3対1の割合で木樽に仕込み、重石をして寝かせる。発酵の期間は短くて9か月、上質なものはそれ以上の時間をかける。時間だけが、うまみを引き出す唯一の道具だ。

最初に樽からにじみ出てくる液体は「ヌクマム・ニー」と呼ばれる一番搾りで、全体の半分から7割ほどを占める。アミノ酸と窒素の濃度が最も高く、最上級として扱われる。ベトナムの基準では、上級品の総窒素量は1リットルあたり30〜39グラムに達するという。

発酵から抽出されるヌクマムの一番搾り
樽からにじみ出る一番搾り(イメージ)

起源については諸説あり、確たる定説はまだない。ベトナムの史料には10世紀の時点ですでに製法があったと記す記録もあるとされるが、一次資料としての確認は難しい。古代ローマの魚醤「ガルム」との関係についても、伝播したという説と、それぞれの土地で独立に生まれたという説の両方があり、学術的な決着はついていない。

2012年、フーコックのヌクマムはEU(欧州連合)から原産地呼称保護(PDO)の認証を取得した。ベトナム産品としては初めてであり、東南アジアの食品としても初めての事例だったとされる。木樽と時間だけで作られてきた発酵調味料が、遠いヨーロッパの制度によって、その価値をあらためて認められた瞬間だった。

時間だけが、うまみを引き出す道具になる

9〜15ヶ月 フーコック島の伝統的なヌクマムに必要とされる発酵期間の目安
2012年 フーコックのヌクマムがEUの原産地呼称保護(PDO)を取得した年

出典:ベトナム政府公式サイト(baochinhphu.vn)、Wikipedia「Phu Quoc fish sauce」ほか。

魚と塩、そして時間。材料だけを見れば驚くほど簡素なのに、そこから生まれる味わいの奥深さは、はるか遠くの制度にまで認められるほどだった。読者のみなさんの食卓にも、同じように時間だけが作り出す味わいがあるかもしれない。

時間をかけた発酵が、味の深みを生んでいる

木樽と時間だけで育まれるベトナムの発酵調味料。地球人倶楽部も、時間をかけた発酵の力を大切にした食品をお届けしています。

オンラインストアへ →

※本ページでご紹介した統計は、各出典(本文中に記載)の公表時点のものです。

※本ページの内容は食文化・食養生に関する一般的な話題のご紹介であり、特定の効果効能を示すものではありません。

「からだのはなし」一覧へ戻る →
NEWSLETTER | 毎週金曜日にお届け 読みものとレシピを、
週に一度だけメールで
生産者のストーリー、季節の食養生コラム、忙しい日に助かる時短レシピ。「からだのはなし」の新着記事もあわせて、週に一度、金曜日にまとめてお届けします。配信の停止・再開は、MYページからいつでも変更いただけます。 「旬のたより」に登録する →