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旅と養生 VOL. 21 — SPAIN

どんぐりを選んだ豚が、
森を守る仕事をしている

スペイン、樫の疎林デエサに放たれた豚
スペイン南西部に広がる樫の疎林(イメージ)

スペイン南西部からポルトガルにかけて、樫の木がまばらに立つ独特の景観が広がっている。畑でも森でもない、その中間のような土地は「デエサ」と呼ばれる。

起源はレコンキスタの時代、13世紀ごろまで遡るとされる。放牧地を囲い込む中世の制度から少しずつ形づくられてきたこの土地は、樫の木を伐らずに残し、その下で家畜を放つという知恵の産物だった。木を守ることが、そのまま牧草地を守ることにつながっていた。

この土地で育つのが、黒い蹄を持つイベリコ豚である。秋、樫の実(ベジョータ)が地面に落ちる季節になると、豚たちは森を歩き回り、自分の力でどんぐりを探して食べる。この時期を「モンタネーラ」と呼ぶ。

樫の木の下に落ちたどんぐりと放牧される豚
秋、樫の実を探して歩く豚たち(イメージ)

どんぐりに多く含まれるオレイン酸は、豚の体に取り込まれると脂肪の質そのものを変える。モンタネーラを終えた豚の脂肪は、オレイン酸の比率が半分を超えるまでに変化するという。オリーブオイルと同じ脂肪酸を、豚が自分の脂に蓄えているということでもある。

スペイン政府は2014年、この豚の格付け制度を法律で定めた。どんぐりだけで育った最上級には赤いラベルが与えられ、放牧に必要な森の面積まで細かく規定されている。豚一頭あたり、樹冠が覆う面積でおよそ1ヘクタール前後が目安とされる。豚を育てるために、まず森の広さが問われるという、少し珍しい発想の制度である。

森の広さが、肉の質を決めている

13世紀 放牧地を囲い込む制度として、デエサの原型が形づくられ始めたとされる時代
1ha前後 最上級「ベジョータ」格付けで、豚一頭あたりに必要とされる樹冠面積の目安

出典:スペイン王令(Real Decreto 4/2014)、スペイン環境省(MITECO)資料ほか。

デエサの一部、シエラモレナの樫林は2002年にユネスコの生物圏保護区にも登録された。木を伐らずに残す選択が、結果として広大な森を守り続けている。豚を育てる話のはずが、気づけば森を守る話になっている。この土地では、その二つがもともと同じことなのだろう。

木を守ることが、そのまま食を育てている

森を残す選択が良質な脂を育てるスペインの知恵。地球人倶楽部も、土地の力を活かした食材選びを大切にしていきたいと考えています。

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※本ページでご紹介した統計は、各出典(本文中に記載)の公表時点のものです。

※本ページの内容は食文化・食養生に関する一般的な話題のご紹介であり、特定の効果効能を示すものではありません。

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