一皿の食事が、
世界の無形文化遺産になった
2013年、ユネスコは少し変わったものを無形文化遺産に登録した。特定の技術や祭りではなく、「地中海式ダイエット」という、暮らしそのものの型だった。
対象はギリシャ・イタリア・モロッコ・スペインなど、地中海沿岸の複数国にまたがる。野菜・果物・豆類・穀物を中心に、肉は控えめ、乳製品は適量、魚はやや多め、そして脂質の多くをオリーブオイルでとる、という食べ方そのものが「文化遺産」だと認められた。
この食事の型が広く知られるきっかけになったのは、1953年に出版された、ギリシャ・クレタ島を舞台にした一冊の本だったとされている。
ギリシャの島イカリアもまた、世界の「ブルーゾーン」のひとつとして知られている。90歳を超えても現役で畑に出る人が珍しくないこの島の暮らしは、地中海式ダイエットが単なる献立ではなく、日々の生活のリズムそのものであることを物語っている。
オリーブは、この食文化の中心にある。搾ったオイルを毎日の料理に使うだけでなく、実そのものも保存食として食卓に並ぶ。一本の木から油と実の両方を得るという暮らし方が、何世代も続いてきた。
一皿の食事が、暮らしの型として遺産になった
出典:UNESCO Intangible Cultural Heritage「Mediterranean diet」(2013年登録)ほか。
一皿の食事が文化遺産になるという発想は、日々の当たり前の食卓にも、実は守るべき価値があるということを教えてくれる。
この連載も、イタリアから始まり、気づけば20の土地を巡ってきた。読者のみなさんの食卓にも、まだ気づいていない小さな価値が眠っているかもしれない。旅はまだ、続いていく。
※本ページでご紹介した統計は、各出典(本文中に記載)の公表時点のものです。
※本ページの内容は食文化・食養生に関する一般的な話題のご紹介であり、特定の効果効能を示すものではありません。