レシピ からだのはなし English
旅と養生 VOL. 11 — NEW ZEALAND

牛を放つ選択が、
この国の食を育ててきた

ニュージーランドの緑の牧草地と放牧される牛
一年の大半を屋外で過ごす牛たち(イメージ)

ニュージーランドを旅すると、どこまでも続く緑の牧草地に出会う。牛や羊が、当たり前のように外を歩いている。この当たり前の風景こそが、実は世界でも珍しい選択の積み重ねでできている。

年間2,000時間を超える日照と豊富な降雨のおかげで、この国では牧草が一年を通して育つ。多くの国では冬場に牛を舎内に入れ、穀物を与えて育てる「グレインフェッド」が主流だが、ニュージーランドの牛は年間350日以上を屋外の放牧地で過ごす。乳業大手フォンテラの乳牛は、摂取する餌の96%が牧草だという。育て方そのものが、この国の個性になっている。

この放牧という選択は、農業のかたちだけでなく、食の考え方そのものにも表れている。1983年、生物学的な農業を実践する生産者たちが集まり、「BPCC(Biological Producers and Consumers Council)」という組織を立ち上げた。これが、現在850以上の生産者を認証するニュージーランド最大の有機認証団体「BioGro」の始まりだ。さらに遡れば、1930年には人智学に基づく農業を実践する農家たちの活動が始まっており、1976年にはリンカーン大学に生物学的農業を研究する専門部門が設けられていた。

Rongoā Māori ロンゴア・マオリ——大地の恵みで、からだを整える先住民の知恵
マオリの伝統的な薬草と植物
マオリの伝統医療で用いられる植物(イメージ)

ヨーロッパ人の入植より前から、この土地にはマオリの伝統医療「ロンゴア」が根づいていた。カワカワやハラケケ(フラックス)、マヌカなど200種以上の植物を用いる体系だ。1907年、この伝統は法律によって抑圧され、地下に潜らざるを得なくなった時期もあったが、1962年に法が廃止されると、近年ではマオリ文化の復興とともに再評価が進んでいる。土地の恵みをそのまま暮らしに活かすという発想は、放牧という選択とも、静かに響き合っている。

土地の恵みを活かす姿勢は、思わぬ形で世界の食卓を変えた例もある。1904年、ワンガヌイの教師イザベル・フレーザーが、中国湖北省から持ち帰った種子。これが「チャイニーズ・グーズベリー」と呼ばれ、1959年に販促目的で「キウイフルーツ」と改称された。一人の教師が旅の記念に持ち帰った種が、今では世界的な輸出産業に育っている。

外で育つことを、選んできた国

350日以上 ニュージーランドの牛が年間で屋外の放牧地で過ごす日数
1983年 有機認証団体BioGroの前身組織が発足した年

出典:グラスフェッド畜産の実態=NZMP/Fonterra公式サイト、Massey University。BioGroの沿革=BioGro公式サイト、Wikipedia「Organic farming in New Zealand」。ロンゴア・マオリ=Te Papa、Te Ara百科事典。キウイフルーツの歴史=NZ History、NZKGI。

牛を外に出す。土地の恵みをそのまま暮らしに取り入れる。一人が持ち帰った種を大切に育てる。ニュージーランドの食の風景は、どれも派手な発明ではなく、自然のリズムに逆らわないという、地味だけれど一貫した選択の積み重ねでできている。

読者のみなさんの中にも、旅先で見た牧草地の広がりを、忘れられない景色として覚えている方がいるかもしれない。手を加えすぎず、土地の力を信じて育てるという姿勢は、遠い国の話であると同時に、日々の食卓にも通じる考え方だと思う。

土地の力を、信じて育てる

牧草地の恵みをそのまま活かすニュージーランドの畜産のように、地球人倶楽部も素材本来の力を信じる食材選びを大切にしています。

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※本ページでご紹介した統計は、各出典(本文中に記載)の公表時点のものです。

※本ページの内容は食文化・食養生に関する一般的な話題のご紹介であり、特定の効果効能を示すものではありません。

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