台所の小さな工夫が、
給食の9割を有機に変えた
日照時間の短い北欧の冬、かつては肉とじゃがいもが食卓の中心だったこの国で、いま保育園から学校、高齢者施設まで、公共機関が提供する給食の「9割近く」が有機食材に置き換わっている。しかも、追加の予算はほとんど使っていない。
コペンハーゲン市がこの数字にたどり着くまでには、15年以上の年月がかかった。高価な有機食材を使うために、この街の給食現場が選んだのは「お金をかけること」ではなく、「献立そのものを見直すこと」だった。
肉の量を減らし、旬の根菜や豆類、全粒穀物を献立の主役に据える。既製品や冷凍の半調理品の仕入れをやめ、厨房でパンを焼き、スープを一から仕込む。皮や芯まで無駄なく使い切り、生ゴミを大きく減らす——コスト削減のために原点に立ち返ったこの手法が、結果として子どもや高齢者の健康にとっても理想的な「養生食」になった。
この献立改革を後押ししたのが、2004年にこの街で生まれた「ニュー・ノルディック宣言」だった。地域の食材を使うこと、季節の移ろいを皿に映すこと——12人のシェフが署名したこの理念は、レストランの中だけでなく、給食の厨房にも同じ方向を向かせる空気をつくった。
"To reflect the changes of the seasons in the meal we make." 季節の移ろいを、私たちがつくる料理に映し出すこと。――ニュー・ノルディック宣言 第二原則
そしてこの国には、給食の改革を市民に受け入れさせる土壌がすでにあった。デンマークは1989年、世界に先駆けて国家によるオーガニック認証制度を法制化し、翌年、赤い「Øマーク」の運用を始めた。世界最古の国家有機認証であるこのマークは、いまや国民の98%が知り、8割以上が信頼するという。スーパーの牛乳や人参にも当たり前についているこのマークがあったからこそ、給食を有機に変えるという行政の判断が、特別なことではなく自然な選択として受け止められた。
台所の工夫が、国の仕組みと重なった
出典:公共給食の有機食材比率=コペンハーゲン市の政策レポートおよびIFOAM Organics Europe等の報告(15年以上かけて達成、追加予算なし)。国内有機食品シェア・Øマーク認知度=Organic Denmark、FiBL「The World of Organic Agriculture」。
特別な食材を使ったわけではない。旬の根菜や豆を、手をかけて無駄なく使い切る——ただそれだけのことが、街全体の食卓を変えた。読者のみなさんが日々の食卓で向き合っている旬の野菜も、その向こう側には同じ可能性があるのかもしれない。
コペンハーゲンが示したのは、旬の食材を丁寧に使い切ることが、特別な予算をかけずとも「良い食」を公共の標準にできる、という発想だった。地球人倶楽部が届けている旬の野菜にも、同じ向き合い方ができるはずだ。
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