火山の熱が、
極北の地に野菜畑をつくった
北極圏のすぐ南、火山と氷の島アイスランド。厳しい気候にもかかわらず、国内で消費される野菜のおよそ半分が、この国自身の畑——正確には温室——で育てられている。
その裏側にあるのが地熱だ。1924年、モスフェルスバイルという町に、アイスランド初の地熱温室が建てられた。これが、火山の熱を農業の力に変える一つの産業の始まりだった。
地熱で温められた温室では、トマト・きゅうり・パプリカ・いちごなどが一年を通じて育てられている。北の冷涼な気候は病害虫の圧力が少なく、結果的に有機的な栽培方法とも相性がいいという。
もう一つ、この島には1100年以上続く発酵乳製品「スキール」の伝統がある。9世紀にノルウェーからやってきた開拓者たちが持ち込んだと伝えられ、中世の写本「サガ」にも登場する。当時の壺に残ったスキールの痕跡は、今も国立博物館に展示されている。各家庭で、前回の一部を種として使い、パン種のように世代を超えて受け継がれてきた。
最も厳しい自然の力——火山と極北の寒さ——が、実は新鮮な野菜を育てる資源そのものになっているという逆転。そして1100年途切れずに手渡されてきた、小さな壺の中の菌。この二つが、この島の食卓を支えている。
厳しい自然そのものが、食卓を支える資源になった
出典:On.is「Greenhouses and Geothermal」、The Kitchn「This Is How Iceland Really Does Skyr」ほか。
一番厳しいと思われていた条件が、実は一番の資源になっている。アイスランドの畑と壺は、そのことを静かに証明している。
読者のみなさんの暮らしの中にも、不便だと思っていたことが、実は工夫の種になっている場面があるかもしれない。旅先の食卓は、そうした発見を運んでくれる。
火山の熱と1100年続く発酵の知恵で、極北の食卓を支えてきたアイスランド。地球人倶楽部も、土地の条件を生かす食のあり方を大切にしたいと考えています。
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