第8回 食について思うこと

2009年11月23日

有機農業の父とも言われるアルバート・ハワード卿(1873 ~ 1947) は、豊かで肥沃で健全な土壌が、作物や動物や人間にとって如何に重要な意 味を持つかを明らかにした人であり、その著作「ハワードの有機農業」は、私のバイブルとも言えるものです。
生命のピラミッドにおいて、人間は必要な栄養素を土壌から直接摂取することができないだけに、植物(作物) は、なくてはならない存在なのです。 植物(作物)を通して土壌からの必須成分を私たち人間は、自然の恵みとして受け取っているのです。
土壌はまた、植物を通して直接的(草食)に、間接的(肉食)にあらゆる動物を養っているわけですが、植物(作物)や動物を食して生命を維持していく人間は、植物や動物を経由して土壌から生い立っているといえるのです。

微生物は、土壌中の化学物質を分解し、それらを植物(作物)の意にかなうものとします。植物(作物) は、大気と水と太陽エネルギーを得て、光合成を行い、炭水化物を作ります。さらにこれらの炭水化物をアミノ酸とたんぱく質にかえていきますが、それにあたっても、生命過程は、土壌の産出力の助力を得なければできません。人間も動物も必須たんぱく質を元 素から合成することはできません。動物はたんぱく質をアミノ酸から組み立てることはでるのですが、それとても、必要な種類と量のアミノ酸を植物(作 物)が微生物の助けを借りて集めたり、産出してくれるという前提条件があってのことです。
たんぱく質を生産する植物は、土壌に長大な一覧表を要求します。つまり、窒素、硫黄、リンなどがたんぱく質分子の部分を作るのに必要とされ、カ ルシウムと石灰、またマグネシウムとマンガン、ホウ素、銅、スズ、モリブデン、その他もろもろの元素がたんぱく質製造との関連で必要なのです。
土壌が本当の意味で肥沃でなく、土壌の中に微生物がたくさんいないと、 全生命過程(たんぱく質の製造) は、不調になるか、停止してしまいます。
微生物を生かしておくには、大量の腐敗した有機物質が大地に加えられる必要があります。森林の地面では、枯れた植物質や死んだ動物質が土に戻っています。このような腐葉土は、腐敗を通して土壌に生命を与え続け、 樹木は、それらを栄養物として生長していくのです。

土壌が私たち人間にとっても動物、植物にとってもきわめて重要であることが明らかになったと思いますが、適切に堆肥(有機) を施された健康な土壌、 適当なバクテリア、真菌類、ミミズがいて、化学肥料や農薬のない土壌、そういう健康な土壌は自然的に病害虫を寄せ付けない強い健康な植物(作 物) を生み出すのです。化学肥料や農薬を大量にまかれた土壌は、やせた土地となり、ビタミンもミネラルも酵素もたんぱく質も、皆乏しい食物を 育て、健康でない植物(作物)、動物、人間を生み出すことになるのです。
逆説的に言えば、バランスのとれた肥沃な土壌に生育した作物は、虫にとっては化学肥料で人工的に作られたやせた土壌で育った作物ほど魅力をもっていないのです。
適切な栄養で育てられた身体が、病気に対する免疫をもっているのと同様に、肥沃で豊かな土壌は、虫や病気に対する自然の免疫性が備わっているのです。虫たちは、病気とか、発育不全、栄養過剰ですでに身体の弱ってしまった作物に、あるいはそういう作物の植わった畑に引き寄せられるの です。
 化学農業の最終結果は、いつも病気です。
まず、土地が病気になり、次に植物(作物)が、その次に動物が、そして人間が病気になるのです。

 地球人倶楽部の目指す有機農業の道は、ただ単に化学肥料を使わない、農薬を使わないということではありません。
食べ物が本来もっているであろう本来の姿。植物を育て、動物を育て、人を育んでくれる「生命の糧」としての食べ物を生産者の皆さんと協力して作っていくことにあります。
生きている、肥沃で豊かな土壌から生まれた作物は、生命が脈打っていると思うからです。

 3月、熊本の生産者の皆さんとの勉強会に出席し、駆け足で産地を見てまいりましたが、ニンジンの生産者・真弓さんの畑は、お父さんの時代かの有機農業をやられている畑で、2代で50 年にもなるということです。阿 蘇の山々の麓に抱かれた肥後平野の中にある真弓さんのニンジンの畑は、病気が発生することもなく、有機肥料も他の半分以下で健康そのものです。
その土壌で育った本来の栄養価をもつニンジンは、すばらしくおいしく、このような作物を会員の皆様にお届けできることを本当に嬉しく思いました。
 食べ物と健康。それは21世紀の人類の大きなテーマとなってくるでしょう。
多くの子供たち、そしておとなたちがアトピーやアレルギーで苦しんでいます。
今、私たちは立ち止まり、生命の糧としての食べ物の本質を今一度、真摯に考え、そして根源に立ち返り、愚直に、正直に、食べ物と向き合い、そしてまた自然の恩恵にあらためて感謝しなければならない、そう思います。

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