第19回 食について思うこと

2009年11月23日

中国産ウナギを国産と偽って販売をする。和牛ブランド「飛騨牛」の等 級を偽装して販売する。悪質な食品偽装事件が立て続けに起こっています。 ウナギを巡っては、輸入した中国産うなぎから合成抗菌剤が検出されたこ とから、中国産ウナギへの信頼が揺らぎ、国産への偽装が相次いでいるわ けです。
このような食の偽装続発の背景には、JAS法の甘さが指摘されています。
有機農産物は、第3 者機関が認証することになっているのはご存知のとおりですが、JAS法の中で第3者の認証を必要とするのは「有機農産物」 だけで、それ以外はすべて自己申告でよいということになっています。
今回のウナギの例でいえば、製造業者が国産と言えば、それで流通するの です。産地証明書も特に法的な添付義務もなく、販売する業者が求めれば 製造業者が作成するというわけですが、今回の事件では、製造業者が産地 証明書も偽造していたことが判明しています。
有機農産物以外のものは、すべて業者側の自主申告になっているこのよう なJAS法は、即、改正して有機農産物と同様に第3者の認証を受けるシステムにしていかなければ、偽装問題は減ることはないと考えます。
悪いことをしないということを前提にしたこのようなJAS法は悪いこと をこれだけやる人間が増えてきた状況では、何の意味もなさないことははっ きりとしていることと思うのです。

 有機農産物の認証制度は、欧米のシステムをそのまま導入した物ですが、 これは悪いことをする人がいることを前提としたものです。何故有機農産 物だけにそのような認証を適用して、他の食品については野放しにしてい るのか理解に苦しむところです。
 現状の食の世界のモラルの低下は著しく、性善説では生活者の安全や安 心を守りきれるものではないことは明らかなことです。
さらには、悪質な偽装に対する罰則も甘いものです。2002 年には法人への罰金は、50万円から1億円に引き上げられましたが、しかし刑事裁判でこの1億円の罰金が言い渡されるまでには、偽装発覚後、「改善」の指導に従 わない場合、「命令」。この「命令」に従わない場合に「刑事告発」という3段階の手続きを踏まなければならず、これまで偽装表示で1億円の罰金を 払った例は一度もないというのが現状なのです。最初の段階の「改善」で、すみませんと誤ってしまえば、それで終わりというのがJAS法の仕組み なのです。食の偽装が止まらない背景には、このような偽装がみつかっても謝れば済むというJAS法の甘さがあり、まさに偽装は「やり得」とい うことになっているのです。
 昨年来からの食にまつわる偽装事件は、大きいものでも北海道のミート ホープから始まって、つい先日のウナギ問題まで10本の指では足りないほど頻繁に起こっています。今回はこれらの偽装問題の根っこにあるもの= 本質を皆様とともに考えてみたいと思います。

 偽装問題の本質は、結論から申し上げれば、日本社会の現在の社会構造というものがあります。
お金を儲けることを最優先し、人をだましても、つまり偽装をしても、とにかく儲ける。そのような生き方や経営が出来る人の一部に勝ち組といわれる人や企業がいるという社会構造です。
昨年来の偽装事件を起こした経営者のひとりひとりを見ても、食べ物を扱 う者としてのモラルや人間としての良心というものがまったく欠落してし まった人間ばかりで、彼らに共通して言えることは、とにかく「どんなことをしても儲ける」ということであることは皆様もよくおわかりのことと思います。このような考え方は、食の世界だけの問題ではなく、日本社会 のあらゆるところで見られ、自己中心、自分中心、お金を儲けることがすべてであるという日本社会の構造であり価値観がこれらの食の偽装問題を生み出している背景と考えるものです。
 2 つめには、日本人のブランド好きというものがあると思います。 ブランド好きの日本人の根っこにあるものは、「品質を重視する」という日 本人特有の考え方です。有名ハンドバックを例にとるまでもなく、ブラン ド品は高くても品質がよいという信頼があるからです。
食べ物の世界の偽装事件でも、ほとんどがブランド品というものの信頼を 利用して行われており、魚沼のコシヒカリ、松阪牛、但馬牛、飛騨牛ときて、比内地鶏、名古屋コーチン等々。ブランド品は、品質が良くて食べて美味 しく、人様にギフトとしてお贈りしても安心。喜んでもらえることから利 用する方が多いわけですが、逆にブランド品は危ない(つまり偽物が多い) という逆説も成り立つわけです。
 食の世界の偽装問題は、今にはじまったわけではなく、これからもなく なるものではありません。例えば居酒屋で500 円と値段のついていた関アジが真アジだったという話では、命を落としたり、健康に被害が及ぶことはありませんが、スーパーで800 円で売られていた国産うなぎの蒲焼が、 実は合成抗菌剤漬けであったというのは話が違います。偽装の問題は、単なるブランド詐称から品質の危険性へと急転しています。
 地球人倶楽部は、創業以来、国産のうなぎを抗生物質ナシのエサと美しい湧き水の中で育て、添加物のないタレで焼き上げたものをお届けしてき ました。こう書いて、そうよね、うなぎは抗生物質づけで危ないから、と 考える生活者の方が、普通より高い地球人倶楽部のうなぎを買ってくださっ ているわけです。地球人倶楽部では、○○は危ない、という言い方をずっと 拒否してきました。ひとつには、自己弁護や自己優位を語っているようで 見苦しいと思っていたからです。しかし今ここにきて、食の世界に存在す る様々な危険性について、生活者の皆様に有益と思う情報は正しく伝え、 生活者の皆様とともにより気持ちよく、感謝の心でいただける食品の生産 に努めていきたいと思っています。

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