第9回 食について思うこと

2009年11月23日

地球人倶楽部の"くろうさぎ" さんのパンは、会員の皆様にも評判が良くご愛顧をいただいていますが、その中であまり売れないパンというものもあり、その代表がコンプレ100(石臼挽自家製粉)というパンです。 今回は、パンについて皆様にお話をしてみたいと思います。パンを主食とする国では、古来パンは「生命の糧」として人間の基本的な食べ物でした。何故、生命の糧なのかをお話するなかで、コンプレ100 というパンのもつ意味もおわかりにものとなってくるものと考えます。

 有史以前のスイスの水上生活者の廃墟には、少なくとも1万年前にパンが焼かれていた痕跡が発見されています。いわゆる歴史の黎明期よりずっと 前から、パンは人間の基本的な栄養物(食べ物) であったのです。 小麦の穀粒は、基本的には一方の端の「胚芽」と呼ばれる風味豊かな堅い粒と、種子として播かれたときに根が生長するまで粒を養うための堅いで んぷん質の「胚乳」の小さな塊と、「ふすま」と総称される三層の外皮からなっています。必須酵素、ビタミン、それに鉄、コバルト、銅、マンガン、モリ ブデンといった鉱物質(微量元素) は、胚芽と外皮の中にあります。大麦、カラス麦、ライ麦、トウモロコシといった他の穀物もこれに似た構造をしており、これらのどの穀物からでもパンは作ることが出来ます。小麦胚芽は、自然の中でも完全なビタミンBの複合体が見出される非常 に数少ない場所のひとつで、それゆえパンは、「生命の糧」と呼ばれたのです。さらに、小麦全体には、全体に極めて微量のバリウム(人体はこれが欠けると心臓病になる) とバナジウム(これも心臓の健康に欠かせない) も含まれているのです。

 大昔から小麦粉は、円形の2つの石の間で挽かれてきました。石臼だ と穀粒がそっくりと挽かれて粉になり、その過程で、堅い外皮も粉にされ、じっくりと挽かれた挽き粉全体に薄茶色の色がつくのです。19 世紀初頭、あるフランス人によって鉄製のローラーが開発され、小麦 は胚芽と外皮と胚乳に分離されるようになりました。それは、ローラー製粉機が昔の石臼から比べて3 つの利点をもっていたからです。でんぷん質の粉から、外皮と胚芽を分離することで、粉屋はそれまで1つの製品だった ものを2 つの製品として売ることが出来たのです。 外皮と胚芽は「くず」、すなわち動物の飼料として売れたのです。 更には胚芽を取り去ることで酸化が遅くなり、これまでよりずっと長期間、粉を保存することができるようになりました。無駄がなくなり粉屋の利益も 増大しました。

19 世紀後半からはじまったローラー製粉機によるパン作りは、天然ビタミンやミネラル類を除去し、人工栄養物を添加したいわゆる「白パン」を誕 生させました。この白パンは、やわらかく美しくなったかわりに生の澱粉以外ほとんど栄養価はなく、風味も小麦とは別のものになったのです。 白砂糖も同様で、糖蜜、ビタミン、ミネラルといった人間の身体にとって よい部分が除去され、残っている物は炭水化物とカロリーだけになりました。 このように精製が行われるのは、いわゆる雑味を除くことによりもっとも長く 保存させられるようにするためでもありるのです。 精製といえば、塩もそうです。海水に含まれる微量ミネラルがほとんど除去されれば、ただの塩化ナトリウムになり、純度99.9%の塩化ナトリウムはたとえ少量であっても長期間に渡って食すと、高血圧や心臓病をひきおこすことが懸念されているのはご承知のとおりです。そして最後に、お米ですが、小麦と同じく、米は天然ビタミンBの複合体のもっとも豊かな 源のひとつですが、白米になると、ただの澱粉質となりかねません。

 以上お話をしてきたことでもお分かりのように、食べ物本来の姿は、すべて「生命の糧」といえるものなのです。 それが様々な都合によって、食べ物の本質である、本来人間がもっとも 必要とする栄養素を失った形へと姿を変えていったのです。 私たちが食べる食物は、消化され、腸から吸収されて血液の中に入っていきます。必要な栄養素は体中の個々の細胞へと運ばれていきます。 細胞は適切な栄養を蓄えている場合には驚異的な自己修復能力をもっていますが、そうでない場合は、細胞は発育を妨げられることになります。 元気で健康であることの源は、食生活にあります。その食生活は「生命 の糧」を食べることからはじまると思います。


「小麦粒を丸ごと挽いた全粒粉は、私たちの健康に欠かせない沢山の食物繊維やビタミン・ミネラルを含み、酵母の発酵も助けます。小麦中の たんぱく質は熱による変質を起こしやすいので、摩擦熱の少ない石臼で 少しづつゆっくりと挽きます。全粒粉は酸化しやすいので、毎日必要な分を挽いて常に新鮮なものを使っています。(くろうさぎ・新井さん)」

 何かの益を得ようとすれば、何かの益を失う場合もあります。 ゆっくりじっくりと、そして毎日必要なものを必要なだけ食していた昔々の 食べ方は、長い年月を経て、再び穀物そのものの味わいを私たちの舌に、 脳に知らせ、細胞のすみずみまで栄養を行き渡らせてくれることでしょう。 会員の皆様には、たまにはくろうさぎさんのコンプレ100を食されることを おすすめいたします。また、玄米もよくかんでたまには食していただければと思います。

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