レシピ からだのはなし English
美容|Vol.41 KARADA NO HANASHI COLUMN

糠袋は、米を白くしたあとの粉で
顔も床もこすった暮らしの道具だった

木の桶と布袋に入った米ぬか
01

米ぬかは、お米を白くしたあとに残る粉だった

白いご飯が炊き上がるたび、その陰でひっそりと生まれる粉がある。米ぬかだ。

玄米のいちばん外側は果皮と種皮に包まれ、その内側に糊粉層という層がある。これらをまとめて「ぬか層」と呼び、玄米の5〜6%を占める。精米とは、このぬか層と胚芽を取り除いて白くする作業だ。通常の精米では、玄米重量の10%ほどが米ぬかとして出るという。辞書や事典も、米ぬかを玄米を精米するときに生じる副産物と説明している。米ぬかからは、米油(こめ油)もつくられている。毎日の食卓の裏側で、途切れることなく生まれてきた粉である。

文部科学省の食品成分表(八訂・増補2023年)には、米ぬか100gあたり脂質19.6g、たんぱく質13.4g、食物繊維20.5gと載っている。ビタミンB1やビタミンEも含まれる。同じ表で精白米の脂質は100gあたり0.9gだから、米ぬかは油分を多く含む粉だとわかる。

02

江戸の人びとは、その粉を袋に詰めて洗った

国立国会図書館の解説によれば、江戸時代の化粧では洗顔の習慣も広まり、洗顔料としては一般にぬかが用いられた。文化・文政期(1804〜1830年)には、江戸の女性にとって化粧は身近な習慣になっていた。そんな日々の中で、洗顔の道具として、ぬかはごく普通に使われていたらしい。安政5(1858)年に刊行された『江戸名所百人美女』には、糠袋で首を洗う女性の姿が描かれている。

糠袋は、布を袋にしてぬかを詰めたものだ。ぬるま湯にひたして絞り、顔や体をなでるように使った。精米のたびに手に入る身近な粉だったことも、よく使われた理由のひとつだろう。使うたびに新しいぬかを詰めたり、豆の粉を混ぜたりすることもあったという。特別な材料を探しに行かなくても、台所の脇にあった粉が、そのまま身じたくの道具になったのである。

身近な粉は、そのまま暮らしの道具になった。
03

台所を出た米ぬかは、床や柱もこすった

米ぬかの行き先は、洗うことだけではなかった。日本大百科全書は、ぬかの古くからの用途として、洗顔用の糠袋、床磨き、糠みそ漬けなどの漬物を挙げている。人の身じたく、家の手入れ、台所の漬物。ひとつの粉が、毎日の暮らしの三つの場面にまたがっていたことになる。ほかにも、肥料や家畜の飼料として使われてきたと、辞書や事典は記している。精米のたびに出る粉を、無駄にせず使い切る知恵が、いくつもの場面に根づいていたのだろう。

手入れの現場の記録もある。2014年12月に岐阜県飛騨市で行われた民家の手入れ活動では、水拭きのあと、少し炒って温めた米ぬかを木綿の袋に入れ、梁や柱を丁寧に磨いたという。磨く前に水拭きで汚れを落としておくのが、この活動での順序だった。米ぬかから染み出した油が木になじむと、すぐに光沢が出たと記されている。農林水産省によれば、米ぬかは脂質を20%ほど含む。顔をこする袋も、柱をこする袋も、中身は同じ米ぬかだった。

糠袋と米ぬかを、数字で辿る

10% 通常の精米で、玄米重量のおよそ1割が米ぬかとして出る
19.6g 米ぬか100gあたりの脂質(精白米は0.9g)
1858年 糠袋で首を洗う女性を描いた『江戸名所百人美女』が刊行された年(安政5年)
5〜6% 玄米に占める「ぬか層」の割合

出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、農林水産省「米ぬかとこめ油」ほか、国立国会図書館「第1章 江戸時代の化粧」、東京都浴場組合の解説、コトバンク(日本大百科全書ほか)

EDITOR'S NOTE

白いご飯をつくるたびに出る粉に、ここまで多くの使い道があったことに驚きました。昔の道具をそのまま真似する必要はありませんが、身近なものを使い切る暮らしの工夫として、眺めていただければうれしいです。

※本ページの内容は、日々の暮らしの工夫と一般的な考え方をご紹介するものであり、特定の効果効能を示すものではありません。

※体調に不安がある場合や、症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。

CAMPAIGN 期間限定「特別優待セット」 こんな旬の食材が届く、はじめての方だけの特別価格 8,800円相当 が 2,980 円 お試しパックをみる →
「からだのはなし」一覧へ戻る →
NEWSLETTER | 毎週金曜日にお届け 読みものとレシピを、
週に一度だけメールで
生産者のストーリー、季節の食養生コラム、忙しい日に助かる時短レシピ。「からだのはなし」の新着記事もあわせて、週に一度、金曜日にまとめてお届けします。配信の停止・再開は、MYページからいつでも変更いただけます。 「旬のたより」に登録する →