風呂敷は、湯殿で衣を包んだ布から
名がついたと伝わる、一枚の布だった
名より先にあった、「平包み」という使い方
買い物にも、贈りものにも、荷造りにも。一枚の四角い布が、これほど長く使われてきた道具は、そう多くない。
風呂敷は、古くは「平包み(ひらづつみ)」と呼ばれた。国語辞典の語誌によれば、平安時代の絵画にも数多く描かれているという。百科事典には、奈良時代の正倉院の宝物にも布で包んだ例が見られ、平安時代には「ころもつつみ」とも呼ばれた、とある。物を布で包む習慣は、「風呂敷」という名前が生まれるよりずっと前からあったのだ。名より先に、使い方があった。
02湯殿の布が、名前になった
では、なぜ「風呂敷」なのか。名の由来には諸説ある。百科事典は、蒸し風呂の床板に敷いた、湯上がりの足ふきにした、自分の衣類を区別するために包んだ、の三つを挙げる。室町時代の大名が衣類を布に包み、湯上がりにその上で身じまいをした例から、三つ目が一般的とされる。三代将軍・足利義満の大湯殿での出来事として語られることも多いが、確かな史料で裏づけられたものではなく、あくまで「と伝えられている」話だ。
「風呂敷」の名が広く定着したのは、銭湯が町に増えた江戸時代とされる。文献では、1616年の徳川家康の形見分けの記録に、この語が見える。宝暦年間(1751〜64)ごろまでは「平包」の名も併用され、やがて「風呂敷」だけが残った。
脱いだ衣を包む布の名が、いつしか、あらゆる包みものの名になった。03
一枚の布が、形を選ばない
江戸時代には、風呂敷に大小さまざまな種類ができた。四尺五寸(約136cm)のものは「大風呂敷」と呼ばれた。文化庁の「文化遺産オンライン」に載る所蔵品の解説には、茶道具を包むものや、嫁入りの夜具や道具を運ぶ大きなものがあったと記されている。四隅を刺し子で補強した風呂敷もあり、刺し子は繕いのためだったものが、次第に飾りの役目も兼ねるようになったという。
「形を選ばない」という性質は、今も変わらない。環境省は、ふろしきは大きさや形を問わず包め、何度でも再利用でき、破れにくく収納に場所をとらないと紹介している。同省の冊子には、四隅を二組ずつ結んで二つの結び目を持ち手にする「お買いもの包み」も、日本古来のふろしきを活用した買い物袋の例として載っている。
風呂敷を、数字で辿る
出典:精選版 日本国語大辞典、デジタル大辞泉、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(いずれもコトバンク掲載)、文化庁「文化遺産オンライン」、環境省「もったいないふろしき」「3Rまなびあいブック」
布を一枚持っていると、箱も瓶も、ときには大きな荷物も、結び方ひとつで包めます。名前の由来は諸説ありますが、湯上がりの脱衣所から台所、買い物かごまで、暮らしに寄り添ってきた布だと思うと、少し身近に感じられます。
※本ページの内容は、日々の暮らしの工夫と一般的な考え方をご紹介するものであり、特定の効果効能を示すものではありません。
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