冷えは、巡りからのサイン
――秋冬を迎える、からだの整え方
冷えは、なぜ起こるのか
朝晩の空気が冷たくなってくると、手足の先が冷たいと感じる方が増えてきます。「冷え」は単なる気のせいではなく、体の血流や自律神経の働きと深く関わっている現象です。
寒さを感知すると、交感神経が優位になり、皮膚に近い血管が収縮して熱の放散を抑えようとします。また、肩甲骨のまわりなどにある褐色脂肪組織は、UCP1というたんぱく質の働きで熱を生み出す役割を担っています。女性は男性に比べて筋肉量が少なく、末梢の血流や熱産生が弱くなりやすいため、冷えを感じやすいとされています。
02「未病」という、もう一つの見方
東洋医学では、体を「気・血・水」という三つの巡りでとらえ、そのバランスの乱れが不調につながると考えます。中国最古の医学書とされる『黄帝内経』には「すでに発症した病でなく、未だ発症しない病を治す」という一節があり、これが「未病」という考え方の起源とされています。冷えは、この未病の代表的なサインの一つとして扱われてきました。
巡りが整えば、
冷えの感じ方も変わっていく。
生姜は、生と乾燥で働きが違う
生の生姜に多く含まれる「ジンゲロール」は、血管を広げて体の表面をすばやく温める働きがあるとされます。一方、加熱したり乾燥させたりすると、ジンゲロールの一部が「ショウガオール」という成分に変化し、胃腸を刺激して体の深部から温める働きを持つとされています。同じ生姜でも、生のまま使うか、乾燥させて使うかで、体への効き方の"向き"が変わるというのは興味深い違いです。
東洋医学の食養生には、根菜や発酵調味料を「体を温める食材」、夏野菜や南国の果物を「体を冷やす食材」とする考え方もあります。これは経験則としての伝統的な知恵であり、現代栄養学として広く実証されているわけではありませんが、季節の食材を選ぶ一つの目安として、昔から親しまれてきました。
04日本に伝わる、温活の知恵
湯たんぽは中国・唐代に起源を持つとされ、室町時代の記録に日本への伝来が残っています。冬至に柚子湯に入る風習は、江戸期の銭湯文化の中で「冬至」と「湯治」、「柚子」と「融通」をかけた語呂合わせの縁起担ぎが由来とされ、19世紀の記録にも「冬至の日、銭湯にて柚子湯を焚く」という一文が残っています。科学的な効能というより、季節の節目を体で感じるための、暮らしの知恵として受け継がれてきたものです。
昔からの知恵と、体のしくみ
→ショウガオール 生姜を加熱・乾燥させると起こる成分変化。温め方の"向き"が変わるとされる
出典:冷えの生理学=生理学研究所発表資料。未病・黄帝内経=クラシエ「Kampoful Life」、日本未病システム学会誌。生姜の成分変化=農林水産省「教えて!農林水産省」。湯たんぽ・柚子湯の由来=各種歴史資料(伝承を含みます)。
地球人倶楽部が大切にしていること
旬の根菜や発酵食品は、昔から冷える季節の食卓に寄り添ってきた食材です。特別な工夫がなくとも、季節にあわせた食材を選ぶことそのものが、巡りを気づかう暮らしの一部になるのではないかと思います。
「冷え」は西洋医学と東洋医学、どちらの視点から見ても、体からの静かなサインです。次回は、衣替えと防虫という、季節の変わり目の暮らしの知恵をご紹介する予定です。
※本ページの内容は一般的な食生活・暮らしの情報であり、疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方は、医療機関にご相談ください。
※東洋医学的な考え方(陰陽論・食材の温冷等)は伝統的な経験則であり、現代医学的に実証されたものではありません。