鉄には、ふたつの顔がある
――吸収率という、もうひとつの視点
ヘム鉄と、非ヘム鉄
鉄分と一口に言っても、体への入り方は一様ではありません。肉や魚、レバーなど動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、ほうれん草や大豆製品、ひじきなど植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」。この二つは、体への吸収のされ方がまったく違います。
ヘム鉄の吸収率はおよそ20〜30%とされる一方、非ヘム鉄はおよそ2〜8%にとどまるとされています。同じ量の鉄を摂っても、体に取り込まれる量には最大で10倍近い差が生まれることになります。
02摂れているようで、摂れていない
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、成人女性の鉄摂取量は平均7.3mg/日。一方、月経のある18〜29歳女性の推奨量は10.0mg/日とされ、日々の食事だけでは推奨量に届きにくいのが実情です。「なんとなく体が重い」と感じる背景に、鉄との付き合い方が関わっていることもあるかもしれません。
食べ合わせという、もう一つの工夫
非ヘム鉄は、腸で吸収される際に「還元」という反応を経る必要があります。ここで力を貸してくれるのがビタミンCです。ビタミンCが鉄に電子を渡すことで、腸の輸送体に取り込まれやすい形に変わるとされています。レモンを搾った青菜のおひたしや、柑橘を添えたサラダは、理にかなった組み合わせと言えそうです。
反対に、緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニン、穀物や豆類に含まれるフィチン酸は、非ヘム鉄と結びついて吸収を妨げるとされています。食後すぐのお茶を少し時間をずらす、というだけでも変わってくるかもしれません。
04南部鉄器という、昔ながらの知恵
道具を変えるだけで、
食卓に鉄が増える。
鉄瓶や鉄鍋で調理すると、溶け出した鉄の多くが吸収されやすい形に変わるとされています。塩や味噌、酢など酸性の調味料を使う料理ほど、溶け出す量が増える傾向もあるようです。サプリメントに頼らずとも、道具の選び方一つで、鉄との付き合い方は変えられます。
吸収率という視点で、鉄を見直す
出典:鉄の吸収率=厚生労働省「日本人の食事摂取基準」に基づく解説資料。摂取量の実態=厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」。吸収率には個人差・測定条件による幅があります。
地球人倶楽部が大切にしていること
ひじきや小松菜、大豆製品といった鉄を含む食材は、私たちが日々お届けしている食卓の定番でもあります。吸収率という視点を少し加えるだけで、同じ食材の選び方や組み合わせ方が、もう一歩変わってくるかもしれません。
鉄は「摂る量」だけでなく「どう組み合わせるか」でも変わる栄養素です。次回はこの連載で、乾物という保存食に隠れた栄養の知恵をご紹介する予定です。
※本ページの内容は一般的な食生活の情報であり、疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。持病や食事制限のある方は、かかりつけ医・管理栄養士にご相談ください。
※吸収率の数値には、食品の種類や体調などによる個人差があります。