においは、
暮らしからの合図
それは、困りごとである前に
朝、台所に立った瞬間に、ふっとにおいを感じることがあります。ゆうべ片づけたはずなのに、と少し気が滅入る。けれどにおいは、責められるべき失敗ではありません。「そこにまだ水気が残っている」「空気が動いていない」——台所が出している、ごく実際的な合図です。合図として読めるようになると、対処する場所がはっきりします。
02においが生まれる、五つの場所
台所で起きることの大半は、この五つに集まります。
生ゴミ。水分が多いほど早く傾きます。三角コーナーに溜めず、水気を切ってから小さく包む。それだけで進み方が変わります。
まな板と包丁。木のまな板は、洗ったあとに立てて乾かすかどうかで別物になります。とくに柄と刃の境目、まな板の側面は水が残りやすい場所です。
ふきんとスポンジ。台所でいちばん濡れている道具でありながら、いちばん見過ごされがちです。使ったら絞って広げる。夜のうちに乾ききる状態にしておく。
排水口。ぬめりは水と汚れと時間の産物です。週に一度、ゴミ受けとその下まで外して洗う日を決めておくと、思い出す手間がなくなります。
冷蔵庫。閉じた空間なので、においは行き場を失って移ります。こぼれた汁を一度拭き取り、開け閉めのたびに視界に入る一段だけでも整えておく。
隠すか、断つか
香りの強いもので覆えば、その場はやり過ごせます。ただ、覆われているだけなので、香りが薄れれば元のにおいが顔を出します。食べものを扱う場所では、香りを重ねるほど、料理の香りとぶつかっていくという問題もあります。
前回の読み物(Vol.11)でご紹介した「中和分解」という考え方は、においのもとになっている物質そのものに働きかけるものです。台所のように、あとから食材を扱う場所では、においを足すより減らすほうが理にかなっています。
04夏の名残を、秋の入り口に
片づけるのは汚れではなく、
残ってしまった水気のほう。
九月は、台所を整えるのに向いた季節です。夏のあいだ台所には湿気が居座り続けていました。気温が下がってくると、その名残が乾ききらないまま器具の陰に残ります。秋のはじめに一度、水が溜まる場所だけを見直しておくと、そのあとの季節がずいぶん楽になります。
大掃除のように一日がかりで取り組む必要はありません。排水口のゴミ受けを外す。まな板を立てる。ふきんを二枚に増やして、乾く時間をつくる。手を動かすのは、どれも一分に満たない作業です。
05地球人倶楽部が大切にしていること
私たちは、食材を選ぶときと同じ目で、台所で使うものも選んできました。有機の野菜を届けている台所が、いちばん清潔であってほしい。そう考えるからです。
毎日の食卓は、特別な工夫でできているわけではありません。水気を切る、立てて乾かす、風を通す。そうした小さな手つきの積み重ねが、次にその場所に立つときの心地よさをつくっています。
今回は、台所のにおいを「困りごと」ではなく「合図」として読みなおしてみました。前回の読み物(Vol.11)では、その考え方のもとになっている植物の知恵をご紹介しています。あわせてお読みいただけたら嬉しいです。
※本ページの内容は、日々の暮らしの工夫と一般的な考え方をご紹介するものであり、特定の症状の治療・予防・診断を目的とした効果効能を示すものではありません。
※調理器具のお手入れ方法は、各製品の表示や取扱説明をご確認ください。
※においの感じ方には個人差があります。