第19回 有機農業について「<生態系について-その1>ハヤブサ」

2009年11月05日

地球人倶楽部のたまごのふるさと、ご存じ『コツコランド農場』は、八幡平国立公園の裾野岩手県滝沢村にあります。先日、農場主の角掛さんが上京され 私達と一日、親しく懇談致しました。その時にコツコランドの最大の天敵「ハヤプサ(タカの一種)」が今年は現れなかったという話がでました。
「毎年毎年、何年もきていたアイツはどうしたのか...。」それから二人で長い時間話しこんだのでした。

 さて、コッコランド農場のニワトリたちは、もう皆様よくご存じのように広い牧場跡地に放され、夜は鶏舎に帰って眠るものの、日中は自然の中を走り回って生活しています。
そして、自然放鶏の最大の悩み、それはこのハヤプサやキツネなど天敵との戦いなのです。
  農場には常に2500羽ぐらいのニワトリが生活していますが、毎年200~250羽ものニワトリがハヤプサやキツネの餌食になってしまうのです。全体のお よそ1割。これだけのニワトリが毎年被害に合うわけですから角掛さんもただ手をこまねいているわけにはいきません。
キツネ対策には放牧場の回りに犬を何匹も配置したり、ハヤブサには線状のネットを張り巡らせたりと様々な手を打っているわけですが、敵もさるもの、生きて いくためには必死で、結局は彼らの方が一枚も二枚も上手で毎年同じような被害をこうむっているわけです。
  コッコランド農場ももうすぐ短い秋が終わり、厳しい冬に入る準備です。冬はニワトリたちも鶏舎の中で過ごすことが多くなり、天敵からの危険も少なくなります。「問題は来年の春だな...」と二人で頭をつきあわせて対策を検討している時、角掛さんが、「今年はハヤブサがこなかったんですよ・・・」とい う話をされ、なぜだろうという話になりました。                  
  今回は皆様とともにコッコランドのハヤプサが消えてしまった「ナゾ」について一緒に考えてみたいと思います。

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ハヤブサとかオオタカ、あるいは関東地方の雑木林などに生息するサシバなどの鳥は、タカの仲間で、 図に示してありますように生態系ビラミッドの一番主上に位置しています。ここが、生態系、いわゆる食物連鎖の最高位置であります。

 図を見て頂ければおわかりのように生態系ピラミッドは、「上に位置するものほど種類が少なく、下のものほど種類も数も多い」という量的な関係を表しています。
つまり、タカやワシの仲間はピラミッドの最も高い位贋にいる高次消費者というわけで種類も数も少ないということです。
これらは生態系ピラミッドの一番上にいるので一見強そうに見えますが、生態系全体というものからみると、「一番弱い立場にある」といえます。

 なぜならタカやワシが生息するためには広い面積の土地(表土)が必要であり、例えばイヌワシの棲む森があったとします。そしてその森の一部が開発か何かで破壊され、生態系の中でどういうことが起きるのかといえば...。
  一部の緑が失われたことによって、これを食べていた昆虫たちの一部が死にます。その昆虫を食べていたカエルやトンボの一部が死に、その上位のヘビや鳥たち の一部も死にますが、しかしその上に位置しているイヌワシは生きていくことはできません。なぜなのでしょうか。

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  つがいのイヌワシが生息していくためには約6000ヘクタールもの広くて豊かな質の高い自然が必要だからなのです。イヌワシの生息地といわれる場所のピラ ミッドの底辺には6000ヘクタールの土地(表土)があり、そこに様々な植物や動物たちが棲んでいなければイヌワシは生きてゆくことができないのです。ま た、前述した関東地方の雑木林にみられるというサシバが生きてゆくためには約50ヘクタールが必要ですし、オオタカは100~200ヘクタールと言われて います。 

 このようにタカやワシなどが生きていくためには、広大で、しかも質の高い自然の生態系が構成されていなければならず、山の中に道路を1本通すだけで、生態系のつながりは崩れ、最も漬点に位置するタカやワシが姿を消してゆくことになるのです。
  つまり、ハヤプサやイヌワシが生息しているということは、そこに質の高い豊かな自然環境が残されているという証明でもあるわけです。

よくテレビなどでイヌワシやタカが少なくなってきていることが取り上げられますが、これらの問題の本質は、単に数が少なくなってきたから守っていかなければならないということだけでなく、健全で良好な自然環境(生態系)が失われているという意味でもあるわけです。
生態系ピラミッドの上位に位置するものが減っていくということは、自然が失われていくこととイコールなのです。

 海に目を転ずれば、海にも海の生態系がありますこ′
海の生態系ピラミッドの最高位者はクジラやマグロであります。日本やアメリカが主になり、その昔は太平洋、日本海のクジラを取りつくし、今は南氷洋に約 70万頭が生息しているわけですが、人間の70万人と比較すれば、この広い地球の海の中で如何に少ない数字であるかがおわかりのことと思います。'
  クジラは哺乳類で大きくて可愛い、だから獲ったらいけないという感情論ではなく、クジラを獲るということは陸上のタカやワシをとることと同じ意味であることを私達は認識しなければならないのです。

 自然が大切であることは、今は誰もが認めることです。
しかし、そう思いながら自然とは何であり、それがなぜ大切なのかということになると要領を得ないところが現実であります。自然とは美しい花や禄の木々だけ のことではなく、様々な要素によって有機的に構成された自然のシステムのことであり、それを生態系というわけです。
よしぜん自然を大切に、自然を守るということは生態系を守り大切にしてゆくことなのです。

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自然とは何か。それは正しく生態系そのものなのです。
  コツコランドのハヤブサは消えていなくなってしまいました。
八幡平の森を棲み家とし、コッコランドのニワトリを餌として生きていたハヤプサは何処にいったのでしょうか・・・。
  ハヤプサにニワトリをとられることもなくなり、それはそれで良かったのだけれど、八幡平の豊かな自然が失われハヤプサが棲めなくなったとしたら、またひと つ私たちは豊かな自然を子供たちに残すことが出来なくなってしまったのではないか...と思っています。

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