第14回 有機農業について「アイガモとコイ」

2009年11月05日

地球人倶楽部の慰安旅行は年に1回。生産者訪問という勉強と実習を兼ねた1泊2日のささやかなものですが、昨年の秋は「鶴巻さんのお餅」で皆様には よくご存じの、新潟は津南町の鶴巻さんの所にお伺いし、稲刈りを全員で手伝しこました。一昨年はといえば、地球人倶楽部の卵のふるさと岩手のコツコランド 農場へ参りましたが、今年はまた何処へいこうかと現在思案中です。

 それはさておき、鶴巻さんの稲刈りですが、有機栽培無 農薬育成しているだけに雑草の繁茂はものすごいもので、雑草と稲が混然一体となってるような状況。随分と苦労しました。その上私たちの訪問する直前に台風 が通過して、その暴風雨で稲はほとんど横倒し状態。泥田と化した田圃の中で全員が悪戦苦闘という場面でありました。
さて、そうして私たちが草とりや倒れた稲を起こしながら刈っているその水田の横に、今日の話の主役である稲づくりの協力者、アイガモ君の住まい?というか 池がありました。何羽ものアイガモが私たちの働く様子を観察しており、ときたまわれわれがちょっかいをだしても、人に慣れているせいか温厚そのも の。田圃の畦道を例によって行儀よく一列になって歩く姿は、津南高原に流れる爽やかな風とともに自然の中にいることを実感させてくれました。

 お米づくりの最大の難関は、雑草との戦いです。
植物としての稲そのものは、非常に強い免疫性をもっていますので、極端な冷夏などがなければ順調に生育いたします。が、何より草とりをすることに大変な労力を要するのです。
そのため一般には労力削滅の救世主となる除草剤を使用するわけですが、そのことが様々な問題を引き起こしているわけです。とりわけ、有機栽培無農薬の米づ くりは、この雑草との戦いをいかに解決してゆくかといった問題に尽きるといっても過言ではないのです。鶴巻さんは、除草剤のかわりに、アイガモとコイを味 方にして米をつくっているというわけです。

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  5月の終わりごろ、田植えをしたあとの水田にアイガモとコイを放ちます。アイガモとコイは水草を食べながら水田のすみずみを回り、草取りを一生懸命行うの です。コイは一度水田に放せば、そのまま水田を棲家として何ケ月かの間そのまますごします。対してカモは、一日中放しておけば、キツネ、イタチ、テンなど の動物、また空からの攻撃など多数の天敵に囲まれていますので、毎日夜はカモの家に移動させなければなりません。鶴巻さんのお宅では、子供たちがカモの面 倒をみています。朝、カモを水田にいれ、夕にはまた、カモの池つきの家に帰すという仕事を任されています。
こうして水田常駐のコイ、出勤体制のカモ、カモ番の子供たちの協力をえて、鶴巻さんは約1.5ヘクタールの水田を作り、そこでお米とモチ米を収穫している わけです。こうして育てて、反あたり8俵程度の収穫ですので、一般の11~12俵に比べると約6.5~7割りぐらいのものであります。
 では、有機質たっぶりの健康な土壌なのに収穫量が少ないのはなぜなのでしょう。
最初にお話を致しましたように、いくらアイガモとコイを使っていても収穫時には草と米とが一緒になって繁茂していることにお気づきかと思いますが、すべて の草を除草剤のようにキレイさっぱり取りきることはできないのです。協力者たちのいわゆる取り残しというか食べ残しが一杯あって、その取り残された雑草に も土壌の養分がまわって草も元気に育ってしまうのです。そしてその分、収穫そのものが減収ということになるわけです。

しかし、理由はそれだけではありませんでした。
鶴巻さんの人柄でしょうか....
草とり名人のアイガモもお米が実ってくれば、当然その穂をついばみはじめます。従って、通常その時期にはアイガモは水田から出してしまったほうがよいので すが、鶴巻さんは「アイガモにも少しは分け前をやらんとな-」、というわけでそのままにしています。
  また、稲刈りもこの地域では最も遅い時期におこなっており、そのためスズメをはじめとする鳥たちの格好のエサ場となってしまいます。が、これも「彼らにも分け前を少しやらんとな-」という表れのひとつで、なんだかんだで収穫量はあまりあがらないというわけです。
ですが、もちろん第一の理由は、量より質を尊重する品種を選び、無理な栽培をしないというポリシーからです。人間の都合にあわせた栽培ではなく、稲の生理 にあわせた栽培を選択するなら、一般米生産農家の目指す、反あたり12俵ではなく、鶴巻さんの選訳する8俵の方が普通なのだと思うのです...。

  鶴巻さんの住んでいる所は、正確には新潟県西魚沼郡津南町であり、その津南町でも津南高原という海抜450メートルの所に位置している中山間地です。魚沼 のコシヒカリと言えば、日本でも、米づくりに適した最高の場所といわれているところです。水源の上流に位置し、森林のミネラルをたっぶりと含んだ汚染のな い水と中山問部ならではの昼夜の温度差などなど。地球人倶楽部では、以前から鶴巻さんともご相談していずれ近い将来この津南町で皆様にお届けするお米を栽 培したいと話をすすめているのです。
皆様にいきわたる程度の作付けの計画というのは並大抵のことではありません。安定してお届けするためには、生産著の数の確保も大変です。現在お届けしている無農薬米は福島の有機生産者グループのものですが、グループの人数の多いことが、安定供給の柱となっているのです。それにくらべ、津南では(もちろん全 国各地でもいえることですが)生産者の高齢化、また後継者もいないという状況が、どんどん生産者を減らし、米づくりを委託する農家そのものがきわめて少な く、除草剤を使用しない有機栽培無農薬の米づくりをなかなか前に進ませない原因となっているのが現状なのです。

 先日、鶴巻さんとも色々と話し合ったのですが、結論は草とり問題を解決する方策を決めるということです。笑い話のように思われるかもしれませんが、私たちは「カモセンターを作れば良い!」という結論をみたのです。

  アイガモ農法は、現在有機栽培無農薬の米づくりの方法のひとつとして一部の生産者がとりいれておりますが、最大の問題はカモの管理です。小さなコガモもー 年たてば立流な成鳥となります。大きくなったアイガモは先にもお話したように稲の穂も食べるようになるわけですから一般的にはその時点でご用済みというこ とになります。その後は業者に渡され、処理されることになります。このように書けば簡単ですが、大きくなったカモに情もうつり、生産者の方々は成鳥したカ モの取り扱いについてはかなりのご苦労があるようです。
  鶴巻さんと私の考えは、アイガモをこのように1年で御役御免とするのではなく、カモセンターを作り、そこでアイガモを管理し育てていこうというものです。 カモセンターで卵を生んでもらい、孵化させ、その子ガモたちに、また活躍してもらうというカモと人間との共同関係です。そのアイガモを生産者の田圃に人手 ならぬカモ手として派遣するというわけです。
高鶴化がすすむ生産者たちの労力として、カモはおおいに活躍してくれます。また、カモは人にも良くなつくので、一部では孫よりもかわいい?という声さえ開かれます。

  情緒に流された話のように聞こえるかもしれませんが、有機米をつくっていこうとすれば、労力の確保が大切です。何より米を作ってみたいという気持ちが大切 です。減反のすすんでゆく中で、少しでも多くの人が農業に目をむけ、農業従事者自身が、誇りをもって仕事ができる環境を大切にしてゆかなければならないと 考えています。
  地球人倶楽部としても私と致しましてもお米を自分たちの手で、自分たちの管理のもとで栽培するということは長年の夢であり、そうしたお米を会員の管様に届 けることができれば最もよい形となります。一昨年の冷夏による米不足は、地球人倶楽部にも非常に不本意なこととなりました。年の初めに契約したお米の価格 と数量が守られないことがはっきりとしたからです。

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その為、会員のみなさまにもご迷惑をかけることとなり、さらには地球人倶楽部が米不足に便乗して、値上げによる暴利をむさぼったのではないかとの厳しい叱責 や不信を一部もたれたこともあったからです。それ以来、今後二度とこの様な目にあわないよう、自分たちの米をつくろうということになり、いろいろと動いて 参りましたが、鶴巻さんのご協力も得て、カモセンターの設立と協力をいただける生産者をみつけて参りたいと思っています。

  農業の世界は、以前にも申し上げたように最短が1年であり、この米づくりも何年かかかると思われますが、必ず近い将来、皆様には新潟魚沼のコシヒカリをお 届けしたい、それも地球人倶楽部がすべて責任をもって管理する体制をつくりたいと思っていまので、どうぞご期待ください。

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