第12回 食について思うこと

2009年11月23日

食品添加物の怖さを日本中に知らしめることになった悲しい事件は、1955年に起こりました。森永砒素ミルク事件です。
森永の粉ミルクを飲んでいた乳児が持続性発熱、下痢、発疹、皮膚への色素沈着などの症状を起こして、その患者数は1万人以上、死者130 名という 大変悲惨な事件でありました。今もなお、後遺症に苦しむ患者さんが国から の救済もなくご苦労をされています。
 この中毒事件の原因は、粉ミルクのpH調整用に使われた「添加物」の第 2リン酸ナトリウムの純度が悪く、「砒素ナトリウム」が粉ミルクの中に混入した ことでした。「pH調整剤」は、一般に食べ物の「日持ち向上剤」ともいわれる添加物で、食品を酸性にし、微生物などの増殖を抑えるために使用さ れます。様々なところで売られるお弁当や総菜が約36 時間腐らずに食べられるのは、この「pH調整剤」が必ず使われているからです。
森永粉ミルクも腐らないようにするためにこのpH調整剤を使用していたのですが、工場での製造過程で問題を起こし、粉ミルクの中に砒素が混入したのです。食品添加物といわれるものが、わが国で使われだしたのは1950 年に入って からで、それまでの私たちの生活は、豆腐屋さんが朝、夕に豆腐や納豆を売り歩いていたことに象徴されるように、その日に作ったものをその日に食べると いう、まさしく地産地消であったわけです。それが、1960 年代に入り、日本は高度成長時代に入っていくことになりました。
それにともない、大量生産、大量消費の時代が到来したのです。全国に商品を流通させる社会システムができあがり、遠距離輸送しても食べ物がいたまず、食品の保存性や見た目の悪さをなくすため、食品添加物が開発され、 大量に使われる時代に突入しました。
逆説的に申し上げれば、食品添加物のおかげで、今私たちが享受している便利な食生活があるともいえるのです。農薬が病害虫との戦いの解決策であったように、食品添加物は、食べ物を腐らせていく病原菌との戦いの解決 策であり、また一方、製造原価を抑え、安い価格でみかけのよい商品作りへの大きな一助にもなりました。一般に売られている食べ物の成分表示を見ると、漢字やカナ交じりの小さな単語がぎっしりと並んでいます。専門家や業界の人でない限りは、これらの添加物についての内容を即座に理解すること はできません。また、それが安全な成分なのかどうかを判断することは一層 難しく、いわゆる情報としては役立つ物ではないようです。 

 現在、食品添加物にはおよそ1500 品目が登録され、それらの安全性は「毒性試験」などを経て、使用基準が定められています。だから、そう危ない物はないはずだ、と考えている人も多いのですが、食品添加物として認められているものであっても「毒性」が確認されている物質も数多くあり、そのような 添加物を使用する場合は、1日これぐらいは摂取しても体に影響は出ないだろう、という量制限が決められているだけなのです。この量は、あくまでも 動物実験等の結果から推定して「心配ない(だろう)」と許可されて食べ物 に使用されているのですが、微量であっても私たち人間は、摂取した添加物を自然に体外に排出することができず、一生かけて体内に添加物を蓄積 していくことになるのです。
 最もわかりやすい例は、ハムやベーコンでしょう。
皆さんおなじみのゴーバルさんのハムは、吟味した餌で自らが育てた豚を原 料に、化学調味料や添加物を一切使用せず、岩塩のピクル液の中で20 日あまり熟成させた後、炭火でゆっくり乾燥させ、薪でいぶすという惜しまぬ手間と技術に裏打ちされた工程を経て一切の添加物を使用せずに作り上 げています。しかも保存料を使用することもなく未開封で30日の日持ちを実 現しています。
一方、市販されているハムは、熟成の日数を省略するために、何百本の注射針でお肉にピクル液を注入します。その注入する液の中には熟成からかもし出されるであろう旨みや細菌の安定のかわりに、塩や香辛料といった 調味料の他、おなじみの化学調味料、畜肉エキス、発色剤、結着剤、保 存料が加えられています。そもそも生肉をいかに保存するかの知恵から生まれたハムがたくさんの添加物と水、化学調味料によって出来上がっているのです。

A社ロースハム裏表示

豚ロース肉

酵母エキス

糖類(水あめ、砂糖)

リン酸塩(Na)

卵たん白

調味料(アミノ酸)

食塩

増粘多糖類

大豆たん白

酸化防止剤(ビタミンC)

還元水あめ

ニコチール色素

乳たん白

発色剤(亜硝酸Na)

豚コラーゲンペプチド
ゼラチン含む

香辛料

ゴーバルのロースハム裏表示

豚ロース肉

岩塩(モンゴル岩塩)

黒砂糖(マスコバド糖)

香辛料(黒胡椒・ローレル・シナモン・コリアンダー・マジョラム・丁子)

  自分の愛する家族の食事を作るのに、日持ちするから、色よく仕上がるから、簡単に出来るから、安くできるからといって化学物質はつかいませんね。 最も大切なことは、食べる人の幸せや健康を願ってつくられたものであることです。料理は愛情だと申しますが、心のない商品づくりから生まれるものは、どこかに相手の健康や幸せより優先する「都合」が存在しています。いくぶん賞味期限が短く、また、油断をするとカビがはえることもある、しかし、当たり前に心を込めて作られた商品こそが、「食べ物」という名に値するのではないでしょうか。
作り手は、製造コストや流通の利便性に流されてはいけない。売り手は、販売する商品の安全性を最も大切にし、賞味期限の短さによるロスと食品の 安全性を引き換えにしてはならない、そして生活者には、みせかけの価格の安さよりも、食べ物本来の味わいや伝統的製造方法を伝えていきたい、 そう考えます。

 地球人倶楽部の商品を買うには、煩雑な注文の締め切りがたくさんあります。
時々私でさえ、今すぐあれが食べたい、と思うわけですが、製造に妥協はせず、また、食べ物を無駄にすることなく、いつも新鮮な物を、心をこめて製造し、またお届けして参りたいと思っております。

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