コラム
キウイを、まるごと信頼する。 ── ニュージーランドの大地と、4代にわたる誓いのこと
冷蔵庫に眠るキウイに、産地と育て方の物語を。
いつでも手に入り、なんとなく栄養があると知っている——そんな身近なキウイ。でも、輸入フルーツの防カビ剤のこと、有機JAS認証が意味する3年間の土づくり、そして4代続く生産者の哲学を知ると、掌の中の果実は少し違う重さを持ちます。産地と育て方から、キウイを見つめ直す物語です。
キウイフルーツは、冷蔵庫によく眠っている果物のひとつかもしれません。いつでも手に入り、栄養があることはなんとなく知っていて、でも選ぶときにそれほど深く考えない。そんな存在です。でも、産地と育て方を知ってから手に取るキウイは、ほんのすこし違う重さを持って、掌に収まるような気がします。
輸入フルーツの表面で、何が起きているか
スーパーの棚に並ぶ輸入フルーツには、もうひとつの顔があります。収穫後、長い海上輸送に耐えるために施されるのが「ポストハーベスト処理」、日本ではおもに「防カビ剤」と呼ばれるものです。チアベンダゾール(TBZ)やイマザリル、オルトフェニルフェノール(OPP)といった薬剤が、果物の表面に塗布・浸透させられます。
日本の食品衛生法はこれらを「食品添加物」として扱い、表示を義務づけています。ただし「防カビ剤使用」と書かれているとき、それは農薬と同じ成分が収穫後に直接塗られた果物である、という意味でもあります。これらの薬剤は皮の内側まで浸透することが知られており、皮をむいても完全に取り除けるとは言い切れません。
輸入キウイも例外ではありません。ニュージーランドから日本まで、船で約12日。低温管理が進んだ現代でも、その行程でカビや腐敗を防ぐために処理を施すものは多くあります。有機栽培であっても、収穫後に処理されれば「オーガニック」の名乗りは許されなくなります。だからこそ、有機JAS認証のついたキウイは、農場から食卓まで、一貫した誠実さの積み重ねなのです。
キウイの故郷と、ニュージーランドという選択
キウイフルーツの原産は、意外にも中国です。かつては「チャイニーズ・グーズベリー」と呼ばれ、ニュージーランドに苗木が持ち込まれたのは20世紀初頭のこと。そこで品種改良と生産が進み、やがて世界に輸出されるようになりました。
現在、キウイフルーツの生産量世界一は中国、2位がニュージーランド、3位がイタリアです。しかし「品質と安全性」という軸で見ると、ニュージーランドは別格の地位を保ってきました。特に、北島のベイ・オブ・プレンティ(プレンティー湾)周辺——テ・プケを中心とした温暖な海岸地帯は、キウイの聖地と呼ばれます。火山性土壌が生んだミネラル豊富な大地、充分な日照と適度な雨。南半球の豊かな自然が、キウイにとって理想の揺り籠となっています。
3年間の沈黙から始まる、有機農業
有機農業というのは、何かをしないことの積み重ねです。化学農薬を使わない。化学肥料を使わない。除草剤を使わない。でもそれだけでは「オーガニック」とは認定されません。有機JAS認証を取得するには、植え付けの前から3年以上にわたって、農薬・化学肥料を使わずに土を育て続けなければならないのです。
その3年間、収穫はできても「有機」と名乗れません。収入は増えないのに、手間は何倍にもなります。それでも続けるのは、土に対する信念と、食べてくれる人への責任があるからです。
ゼスプリのオーガニックキウイが育つ果樹園の土は、空気を含み柔らかく、保湿性が高く、土壌生物が活発に活動しています。目には見えないミミズや微生物たちが土をほぐし、落ち葉や堆肥を分解し、根が水や養分を吸いやすい環境をつくっています。そういう土で育ったキウイの樹は、病気や害虫への抵抗力が自然に備わってきます。薬に頼らなくても、健やかに実をつけるのです。
4代目が守る、すべての生命とのバランス
ニュージーランド北島イーストランド地方に、カトリーナ&マーク・ホワイト夫妻が営む果樹園があります。ゼスプリのオーガニックキウイ生産者のひとりです。彼女はこう語ります。
「鳥、草花、小さな虫たち。どんな生き物も、懸命に生きています。だから”すべての生物がバランス良く生きられる方法を見つける”のが、私たちの考え方です」
家族が代々この地で農園を営み、彼女たちで4代目。ずっとオーガニック農法で育ててきました。一般的に害虫と呼ばれるナメクジでさえ「大歓迎」だといいます——豊かな土をつくる仲間だからです。そして、ナメクジを食べるウェカやオウビタキといった鳥たちは、キウイの実には手を出しません。農薬を使わないことで、生態系のバランスそのものが、キウイを守る力になっているのです。
ニュージーランドの先住民マオリの人々は、土地の守り神「カイティアキ」という概念を大切にしてきました。人間は土地を所有するのではなく、守り、次世代に渡す存在だという思想です。ホワイト夫妻もまた、同じ精神でこの大地と向き合っています。
サンゴールドという、太陽の果実
ゼスプリのオーガニックキウイには、グリーンとサンゴールドの2種類があります。サンゴールドキウイは、10年以上の歳月をかけて開発された品種です。果肉は鮮やかな黄金色で、グリーンに比べて甘みが強く、なめらかでトロピカルな風味が特徴。そしてその栄養価は驚くほど豊かです。
サンゴールド1個に含まれるビタミンCは約152mg——それだけで1日に必要とされるビタミンCをほぼまかなえる量です。ビタミンCは体の中に貯めておけず、加熱すると失われます。だから毎日、新鮮なまま口にすることに意味があります。それに加えて、ビタミンEとして知られる成分、食物繊維、カリウム、そしてキウイに含まれるタンパク質分解酵素「アクチニジン」——消化に関わる酵素として知られ、加熱すると失われるため、生で食べる意味があります。1個の黄金色の果実に、これだけの成分が宿っているのです。
日本と世界が認める、厳格な基準
ゼスプリのオーガニックキウイは、有機JAS認証(日本)だけでなく、ニュージーランド、アメリカ(USDA)、EU、韓国など、世界各国のオーガニック基準を同時に満たしています。複数の認証機関の目が、農場・加工・輸送のすべての工程に注がれています。それは単に「書類が揃っている」ということではありません。生産者たちの日々の実践が、世界水準の誠実さとして認められているということです。
日常に溶け込んでいる果物だからこそ、選ぶ目をやしなうことができます。どの土地で、誰の手で、どんな哲学で育てられたのか。防カビ剤を使わないとはどういう選択か。4代にわたって土を守るとはどういうことか。そこまで想像してから口にするキウイは、たしかに違う味がする——と、私たちは思っています。
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CHIKYUJIN CLUB どこで、誰が、どう育てたか。それがわかる食卓へ。 産地と育て方を知って選ぶ——その考え方は、キウイに限りません。地球人倶楽部は、作り手の顔が見える食材を、37年間ずっと会員の食卓へお届けしてきました。 言葉でお伝えするより、まず一度、食卓で確かめていただくのが一番だと思っています。初めての方に、旬の食材を集めた「おためしセット」をご用意しました。
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監修者:地球人倶楽部 編集部