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発酵調味料とは何か|醤油・味噌・みりん「本物」と「なんちゃって」の違い

COLUMN / 食のはなし

発酵調味料とは何か
醤油・味噌・みりん「本物」と「なんちゃって」の違い

調味料こそ、毎日からだに入る「入口」。

食材の安全性を意識するようになると、野菜の農薬、肉の飼育環境、豆腐の添加物へと目が向いていきます。しかし、毎日の食事で最も継続的に使い続けるものは何かと問われたら――それは調味料かもしれません。醤油、味噌、みりん、酢、塩。一回の使用量はわずかでも、毎日三食使い続けるものだからこそ、その中身と質が、食卓に静かに積み重なっていきます。

日本の食文化の根幹を成す発酵調味料は、実は「選び方」によって質が大きく変わります。同じ「醤油」「味噌」という名前でも、発酵に時間をかけた本物と、添加物で味を補った工業製品とでは、料理の仕上がりが異なります。今日は、発酵調味料とは何かという基本から、それぞれの「本物」の見分け方までをまとめてお伝えします。

1発酵調味料とは何か

発酵調味料とは、麹菌・酵母・乳酸菌などの微生物の働きによって原料を発酵させ、うま味や香りを引き出してつくられる調味料の総称です。日本の食卓を支える醤油・味噌・みりん・酢は、いずれもこの発酵の力を借りてつくられています。

調味料 主な原料 発酵に関わる微生物
醤油 大豆・小麦・塩 麹菌・酵母・乳酸菌
味噌 大豆・米や麦・塩 麹菌・酵母・乳酸菌
本みりん もち米・米麹・焼酎 麹菌
米や穀物・アルコール 麹菌・酢酸菌

発酵には時間がかかります。時間をかけてゆっくり発酵・熟成させたものほど、複雑なうま味と香りが自然に生まれます。一方、短期間で「発酵調味料らしい味」を再現するために、うま味調味料やアルコールで補う製法も広く流通しています。この違いを知ることが、「本物」を選ぶ第一歩です。

2醤油の「本醸造」と「天然醸造」の違い

醤油のラベルには、多くの場合「本醸造」と書かれています。これはJAS(日本農林規格)が定める製法の分類のひとつで、大豆・小麦・塩を麹菌などの微生物の力で発酵・熟成させる伝統的な方法を指します。日本で流通する醤油の約8割が、この本醸造方式といわれます。

その本醸造の中でも、さらに厳しい条件を満たしたものだけが「天然醸造」を名乗れます。JASの基準では、天然醸造と表示できるのは、(1)本醸造の製法であること、(2)酵素の添加など醸造を促進する処理を行っていないこと、(3)食品添加物を使用していないこと――この三つをすべて満たすものに限られます。最低でも一年、長いものでは二年以上をかけて、自然の温度変化の中でゆっくり発酵・熟成させることで、アミノ酸の複雑な旨み、奥深い色、豊かな香りが自然に生まれます。

一方、醸造期間を短縮した醤油は数か月で完成しますが、その分の旨みや色を、うま味調味料やカラメル色素で補うことがあります。原材料名に「アミノ酸等」「カラメル色素」と並んでいれば、それが補いの痕跡です。ラベルを読む習慣が、選び方を変えていきます。

3味噌の「生きている」ものと「加熱された」もの

市販の味噌の多くは、発酵の進行を止めて品質を安定させるために、加熱処理が施されています。この処理によって長期保存が可能になりますが、同時に、味噌の中で生きていた酵母や乳酸菌の働きは穏やかになります。加熱処理をしていない「生味噌」と、加熱処理をした味噌は、発酵食品としては少し異なる存在といえます。

非加熱・無添加の生味噌は、冷蔵保存が必要で日持ちは短めですが、発酵食品としての本来の風味を保っています。毎日の味噌汁に、生きた発酵の味わいを取り入れる――それは、昔ながらの発酵文化を食卓に呼び戻すことでもあります。なお、アルコール(酒精)を添加して発酵を止めている味噌もあります。原材料名に「酒精」とあれば、それが発酵を止めた印です。

4「本みりん」と「みりん風調味料」は、別物です

スーパーの調味料コーナーには「本みりん」と「みりん風調味料」が並んでいますが、この二つは原材料も製法も根本的に異なります。本みりんは、もち米・米麹・焼酎を原料とし、40〜60日以上かけて糖化・熟成させた、れっきとした醸造調味料です。アルコール分を14%前後含むため酒税の対象となり、糖とアミノ酸の複雑な旨みが、煮物の照りとコク、魚や肉の臭み消しといった複合的な働きをもたらします。

みりん風調味料は、水飴や糖類に、うま味調味料などを加えて「みりんに似た味」を再現したものです。アルコールをほとんど含まないため酒税がかからず、価格が抑えられます。手軽ではありますが、本みりんが持つ複雑な旨みや、加熱によって生まれる照りの出方は再現しきれません。本みりんへの切り替えは、料理の仕上がりへの効果が分かりやすく、調味料の見直しの中でも取り入れやすいもののひとつです。

5塩の選び方――精製塩と天然塩

食塩(精製塩)は、イオン交換膜製法などによって海水から塩化ナトリウムをほぼ純粋に取り出したもので、その大部分が塩化ナトリウムです。一方、天然塩(自然塩・海塩)は、海水を蒸発・濃縮させて作られ、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを含みます。料理に使ったときのまろやかさや複雑な塩味は、こうしたミネラルによるものといわれます。

調味料の中で最もシンプルな塩ですが、その質は、料理全体の味の土台を支えています。ひとつまみの塩を変えるだけで、素材の味わいの感じ方が変わることもあります。

調味料を変えることが、料理の底力を上げる

天然醸造の醤油、生きた味噌、本みりん、天然塩。これらに切り替えて料理をすると、同じレシピでも味の深みが変わることに気づきます。素材の旨みが引き出され、余計な味付けを必要としない。「なぜかこの料理はおいしい」という感覚の裏には、多くの場合、調味料の質があります。

毎日使うものだからこそ、その選択が食卓の質を静かに、しかし確実に変えていきます。何か特別なことをするのではなく、いつもの調味料を、少しだけ良いものに。それが、いちばん無理なく続けられる、食卓の底上げの方法かもしれません。

よくある質問

Q. 発酵調味料と発酵食品は同じものですか?

A. 発酵調味料は発酵食品の一種で、特に料理の味付けに使うものを指します。ぬか漬けや納豆なども発酵食品ですが、これらは調味料ではなく「食べる」ことを主目的とした発酵食品です。

Q. 天然醸造やみりんへの切り替えは、どれから始めるのがおすすめですか?

A. 本みりんは他の調味料に比べて仕上がりの違いが分かりやすく、取り入れやすい入り口です。そこから、天然醸造醤油、生味噌へと少しずつ広げていく方法をおすすめします。

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毎日使うものから、変えていく。

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情報源:
・農林水産省「しょうゆの日本農林規格(JAS)」および品質表示基準
・酒税法(本みりんの定義に関する規定)