発酵調味料とは何か|醤油・味噌・みりんの種類と表示の読み方
COLUMN / 食のはなし
発酵調味料とは何か
醤油・味噌・みりんの種類と表示の読み方
食材の安全性を意識するようになると、野菜の農薬、肉の飼育環境、豆腐の添加物へと目が向いていきます。しかし、毎日の食事で最も継続的に使い続けるものは何かと問われたら――それは調味料かもしれません。醤油、味噌、みりん、酢、塩。一回の使用量はわずかでも、毎日三食使い続けるものだからこそ、その中身を知っておくことには意味があります。
結論から言うと、農林水産省は、味噌、醤油、酢、みりんなどを穀物由来の発酵調味料として紹介しています。食品表示基準には「発酵調味料」の語は出てこず、醤油の製造方式(本醸造・混合醸造・混合)、「天然醸造」の表示の条件、酒税法上の「みりん」の定義などが、それぞれの法令で定められています。この記事では、それぞれの表示の読み方を、公的な資料をもとに整理します。
日本の食文化の根幹を成す発酵調味料は、醤油・味噌・みりんなど、種類によって製法や表示のルールが異なります。同じ「醤油」「味噌」という名前でも、製造方式や使われている原材料はさまざまで、表示を見ると違いが分かる場合があります。今日は、発酵調味料とは何かという基本から、それぞれの表示の読み方までを、公的な資料や業界団体の説明をもとにまとめてお伝えします。
1発酵調味料とは何か
発酵調味料とは、麹菌・酵母・乳酸菌などの微生物の働きを利用してつくられる調味料を指して使われる言葉です。農林水産省は、味噌、醤油、酢、みりんなどを穀物由来の発酵調味料として紹介しています(農林水産省)。日本の食卓を支える醤油・味噌・みりん・酢は、いずれもこの発酵の力を借りてつくられています。なお、食品表示基準には「発酵調味料」の語は出てきません。商品の種類を示す名称としても、みりんタイプの「発酵調味料」のように使われることがあります(全国味淋協会)。
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| 調味料 | 主な原料 | 発酵に関わる微生物 |
|---|---|---|
| 醤油 | 大豆・小麦・塩 | 麹菌・酵母・乳酸菌 |
| 味噌 | 大豆・米や麦・塩 | 麹菌・酵母・乳酸菌 |
| 本みりん | もち米・米麹・焼酎またはアルコール | 麹菌 |
| 酢 | 米などの穀類、果実、アルコールなど | 酢酸菌(酢酸発酵) |
※農林水産省の解説では、味噌は麹菌のあとに乳酸菌と酵母、醤油は「コウジカビ」のあとに乳酸菌と酵母が働くとされています。酢は酢酸菌による酢酸発酵でつくられます(農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」、食品表示基準 別表第三)。
発酵・熟成にかかる期間は、種類や製法によって異なります(農林水産省)。また、醤油には、もろみにアミノ酸液などを加える製造方式もあります。表示を見て、製造方式や使われている原材料の違いを知ることが、調味料を選ぶ第一歩です。
2醤油の「本醸造」と「天然醸造」の違い
醤油の名称には、「こいくちしょうゆ(本醸造)」「しょうゆ(混合醸造)」のように、製造方式が括弧書きで示されます(食品表示基準 別表第四)。食品表示基準(別表第三)とJAS(日本農林規格)は、しょうゆを3つの製造方式に分けています。本醸造方式は、もろみ(醤油麹に食塩水または生揚げを加えたもの)を発酵・熟成させて得られた清澄な液体調味料で、補助的な酵素の使用を含みます。混合醸造方式は、もろみにアミノ酸液などを加えて発酵・熟成させたもの、混合方式は、本醸造方式などの醤油や生揚げ(発酵・熟成させたもろみを圧搾した液体)にアミノ酸液などを加えたものです(JAS 1703:2021)。日本の醤油の出荷数量(2024年・輸出を含む)のうち、本醸造方式は約90%、混合方式は約10%、混合醸造方式は約0.5%でした(しょうゆ情報センター掲載の統計から計算して丸めた値。農林水産省の資料をもとにした業界の一部推計を含み、製造方法別は業界の調査を基にした一部推計です)。
本醸造の中には、「天然醸造」と表示できるものがあります。食品表示基準(別表第二十二)は、しょうゆに「天然」「自然」の用語を使うことを原則として禁じており、例外として「天然醸造」を認めているのは、(1)本醸造方式によるものであること、(2)セルラーゼ等の酵素によって醸造を促進したものでないこと、(3)食品衛生法施行規則別表第一に掲げる添加物(指定添加物)を使用していないこと――この三つにすべて当てはまるものです。この条件に、熟成期間の定めはありません。醤油の発酵・熟成にかかる期間は種類によって異なり、農林水産省の解説では、濃口醤油は約8か月、白醤油は約3か月、再仕込み醤油は1.5〜2年以上などとされています。
混合醸造方式・混合方式の醤油は、製造の途中でアミノ酸液(大豆等の植物性たんぱく質を酸で処理したもの)などを使います(JAS 1703:2021)。名称の括弧書きに加えて、原材料名や添加物の欄も見ると、使われているものの違いが分かります。ラベルを読む習慣が、選ぶときの手がかりになります。
3味噌の発酵と、「生」「酒精」の表示
味噌には、酵母が生きた状態で存在するものがあります。広島県立総合技術研究所は、醸造した味噌をそのまま袋や容器に詰めると、再発酵によって炭酸ガスが発生し、ふくれが生じることがあるため、充填前の加熱処理、アルコールの添加、通気口付き容器の使用といった対策がとられているとしています(広島県、2022年)。また、みそ健康づくり委員会(味噌業界の団体)は、味噌には加熱殺菌しない製品が多く、酵母や乳酸菌が生きたまま存在していると説明しています(2014年改訂の資料)。
「生味噌」という語は、食品表示基準には出てきません。みそ健康づくり委員会(味噌業界の団体)の資料(2014年改訂版)は、業界の「みその表示に関する公正競争規約」(表示規約)が、「生」みその表示を、発酵容器に充填した後、出荷のための容器包装作業の前後に加熱殺菌処理を施さないものに限っていると説明しています。なお、味噌には、酵母の再活動を抑えるために酒精(エタノール)を添加するものがあります(みそ健康づくり委員会)。消費者庁の資料では、エタノールの簡略名又は類別名として「アルコール」「酒精」が示されており、原材料名や添加物の欄に「酒精」とあれば、エタノールが使われています(消費者庁)。ただし、「酒精」の表示がなくても、酵母の働きでアルコールが生じることがあります(広島県)。
4「本みりん」と「みりん風調味料」は、別物です
スーパーの調味料コーナーには「本みりん」と「みりん風調味料」が並んでいますが、この二つは原材料も製法も根本的に異なります。酒税法第3条第11号は、みりんを、米及び米こうじに焼酎又はアルコールを加えてこしたものなどのうち、アルコール分が15度未満で、エキス分が40度以上であることなどの要件を満たす酒類と定めています。農林水産省の解説では、本みりんは、蒸し米と米麹を焼酎に仕込み、20〜30℃で40〜60日間糖化・熟成させたあと、圧搾やろ過を経て、さらに数か月貯蔵してつくられます。アルコール分は約14%(全国味淋協会)で、酒類のため酒税の対象です。全国味淋協会(業界団体)は、本みりんの糖類・アルコール・アミノ酸などの成分が、煮くずれ防止、テリ・ツヤ、コクと旨み、臭み消しといった調理効果をもたらすと説明しています。
みりん風調味料について、国税庁のサイトに掲載された資料(書籍を引用した記述)は、アルコール分が1%未満で、水あめ、米こうじ、うま味調味料などを原料としてブレンドして製造され、酒税法上の酒類には該当しないと説明しています。酒税法は、酒類をアルコール分1度以上の飲料と定めています(第2条)。全国味淋協会(業界団体)は、みりん風調味料はアルコールがほとんど含まれないため、アルコールによる調理効果は期待できず、本みりんとは調理効果に決定的な違いがあると説明しています。
5塩の種類――食塩・並塩・精製塩
塩にはいくつかの種類があり、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、食塩、並塩(別名:あら塩)、精製塩などが分けて載っています。備考には、塩化ナトリウムの割合が、塩事業センターなどの品質規格で、精製塩は99.5%以上、食塩は99%以上、並塩は95%以上と記されています(文部科学省)。日本の塩づくりは、海水から濃い塩水をつくる「採かん」と、煮つめて結晶にする「せんごう」の2つの工程で行われるのが一般的で、採かんにはイオン交換膜法や塩田法などがあります(塩事業センター)。「天然塩」「自然塩」「海塩」という名前については、食品表示基準に定義が見当たらず、公的な資料では確認できませんでした。
調味料の中で最もシンプルな塩ですが、種類によって成分の割合は異なります。表示や品質規格を知っておくと、選ぶときの手がかりになります。
調味料の表示を見直すという選び方
醤油、味噌、みりん、塩。毎日の食事で使う調味料は、表示を見ると、製造方式や原材料の違いが分かります。
毎日使うものだからこそ、選ぶときの見方を知っておくと役に立ちます。何か特別なことをするのではなく、いつもの調味料の表示を、ひと目読んでみる。それが、無理なく続けられる見直しの方法かもしれません。
よくある質問
Q. 発酵調味料と発酵食品は同じものですか?
A. 発酵調味料は発酵食品の一種で、特に料理の味付けに使うものを指します。ぬか漬けや納豆なども発酵食品ですが、これらは調味料ではなく「食べる」ことを主目的とした発酵食品です。
Q. 天然醸造やみりんへの切り替えは、どれから始めるのがおすすめですか?
A. 決まった順番はありません。醤油は名称の括弧書き(本醸造・混合醸造・混合)と原材料名・添加物の欄、みりんは「みりん」か「みりん風調味料」か、味噌は原材料名に「酒精」があるかといった表示を見比べて、気になるものから試す方法があります。
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情報源:
・農林水産省「日本農林規格 しょうゆ(JAS 1703:2021)」
・食品表示基準(e-Gov法令検索)別表第三・別表第四・別表第二十二
・しょうゆ情報センター「醤油の統計資料(2024年実績)」
・農林水産省「にっぽん伝統食図鑑:醤油、味噌、その他調味料」
・酒税法(e-Gov法令検索)第2条・第3条第11号
・国税庁サイト掲載資料「本みりんの歴史」
・全国味淋協会「本みりんの知識」(業界団体)
・みそ健康づくり委員会「みそ知り博士のQ&A50」(業界団体、2014年改訂)
・広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター「防湧性を高めた味噌製造用酵母DBH114株の開発」(2022年)
・消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
・公益財団法人塩事業センター「よくいただくご質問」
・厚生労働省「食品添加物」
(2026年10月5日に内容を見直しました)