コラム
調味料こそ、毎日からだに入る添加物の入口。 天然醸造と本物の発酵が、料理と健康を変える
調味料こそ、毎日からだに入る添加物の入口。
天然醸造と本物の発酵が、料理と健康を変える
食材の安全性を意識するようになると、野菜の農薬、肉の飼育環境、豆腐の添加物へと目が向いていきます。しかし毎日の食事で最も継続的にからだに入り込むものが何かと問われたら——それは調味料かもしれません。醤油、味噌、みりん、酢、塩。一回の使用量はわずかでも、毎日三食使い続けることで、その中身がからだに積み重なっていきます。
日本の食文化の根幹を成す調味料は、実は「選び方」によって質が大きく変わります。同じ「醤油」「味噌」という名前でも、発酵に時間をかけた本物と、添加物で補った工業製品とでは、からだへの作用も料理の仕上がりも異なります。
醤油の「本醸造」と「天然醸造」——その差を知る
醤油のラベルには多くの場合「本醸造」と書かれています。これは醤油の製造方式の分類で、大豆・小麦・塩を麹菌で発酵させる伝統的な方法を指します。しかし「本醸造」という表示の中には、製造期間と品質に大きな幅があります。
「天然醸造」は、本醸造の中でも化学的な手段で発酵を促進せず、加温もせず、醸造期間を短縮するための添加物(アミノ酸等)も使わずに、自然の温度変化のなかでゆっくりと熟成させた醤油です。最低でも一年以上、長いものでは二年以上の時間をかけて発酵・熟成されます。その過程で、アミノ酸の複雑な旨み、奥深い色、豊かな香りが自然に生まれます。
一方、速醸法で製造された醤油は数ヶ月で完成しますが、旨みが不足する分をアミノ酸(うま味調味料)で補い、色をカラメル色素で整えます。原材料名に「アミノ酸等」「カラメル色素」が並んでいれば、それが補強の痕跡です。
味噌の「生きている」状態と「死んでいる」状態
市販の味噌の多くは、発酵の進行と品質の安定のために加熱処理(パスチャライズ)が施されています。この処理によって長期保存が可能になりますが、同時に生きた酵母や乳酸菌が失活します。腸内環境への働きかけという観点から言えば、加熱処理前の「生きた」味噌と、加熱処理後の「安定した」味噌は異なる存在です。
非加熱・無添加の生味噌は、冷蔵保存が必要で日持ちが短い反面、本来の発酵食品としての生命力を保っています。毎日の味噌汁に生きた発酵の力を込めることは、腸内フローラへのアプローチとしても意味があります。また、アルコールや酒精を添加して発酵を止めている味噌もあります。原材料名に「酒精」とあれば、それが発酵ストップの証です。
本みりんと「みりん風調味料」——根本的に異なる二つ
スーパーの調味料コーナーには「本みりん」と「みりん風調味料」が並んでいますが、この二つは原材料と製法が根本的に異なります。本みりんはもち米・米麹・焼酎を原料とし、40〜60日以上かけて糖化・熟成させた発酵食品です。アルコール分を含み、糖とアミノ酸の豊かな旨みが、煮物に照りとコク、肉の臭み消しという複合的な働きをもたらします。
みりん風調味料は、水飴や糖類に醸造酢、グルタミン酸ナトリウム(うま味調味料)などの添加物で「みりん風の味」を再現したもので、アルコールをほぼ含まないため酒税がかからず価格が安くなります。しかし本みりんの持つ複雑な旨みや、加熱による照りの出方は再現できません。料理の仕上がりに関わる本みりんへの切り替えは、最も費用対効果の高い調味料の見直しのひとつです。
塩の選び方——精製塩と天然塩の違い
食塩(精製塩)は、海水を電気分解して塩化ナトリウムをほぼ純粋に取り出したものです。99%以上が塩化ナトリウムで、ミネラル分がほとんどありません。一方、天然塩(自然塩・海塩)は海水を蒸発・濃縮させて作られ、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのミネラルを含みます。料理に使ったときのまろやかさと複雑な塩味は、ミネラルの存在によるものです。調味料の中で最もシンプルな塩ですが、その質が料理全体の基底を支えています。
調味料を変えることが、料理の底力を上げる
天然醸造の醤油・生きた味噌・本みりん・天然塩。これらに切り替えて料理すると、同じレシピでも味の深みが変わることに気づきます。素材の旨みを引き出し、余計な味付けを必要としない。「なぜかこの料理はおいしい」という感覚の裏には、多くの場合、調味料の質があります。毎日使うものだからこそ、その選択が食卓の質を静かに、しかし確実に変えていきます。
監修者:地球人倶楽部 編集部