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卵ひとつに、問いを持つ。 動物福祉という選択が、食卓と農業の未来を変える

卵ひとつに、問いを持つ。
動物福祉という選択が、食卓と農業の未来を変える

日本人が一年間に消費する鶏卵は、一人あたり約340個。毎日の食卓に欠かせない卵ですが、その卵を産んだ鶏がどのような環境で育ったかを意識する方は、まだ多くありません。卵は安くて栄養豊富な食材として重宝されてきた一方で、その「安さ」を支える生産体制については、あまり語られてきませんでした。

しかしいま、世界の食の潮流は確実に変わりつつあります。消費者が「何を食べるか」だけでなく「どのように生産されたものを食べるか」を問いはじめた時代に、卵という身近な食材が問い直されています。

バタリーケージという現実

日本で流通する鶏卵の大部分は、「バタリーケージ」と呼ばれる金属製の檻の中で飼育された鶏から産まれます。一羽あたりの飼育面積はA4用紙一枚程度とも言われ、鶏が翼を広げること、地面を歩くこと、砂浴びをすること——鶏が本来持つ自然な行動をとることがほとんどできない環境です。病気の蔓延を防ぐための抗生物質の使用や、くちばしの先端を切除するデビーキングも、過密飼育に伴う措置として行われてきました。

EUはすでに2012年にバタリーケージを全面禁止し、ケージフリー(ケージを使わない飼育)への移行を義務付けました。アメリカでも州単位での規制が進み、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでも改革が加速しています。一方、日本はこの国際的な流れへの対応が遅れており、現在も採卵鶏の9割以上がバタリーケージで飼育されていると言われています。

アニマルウェルフェアの「5つの自由」

動物福祉(アニマルウェルフェア)の国際的な基準として、英国農場動物福祉審議会が提唱した「5つの自由」があります。①飢えと渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み・傷・病気からの自由、④正常な行動を表現する自由、⑤恐怖と苦悩からの自由——これらは、家畜を含むすべての動物が持つべき権利として国際的に認められています。

この基準に照らすと、バタリーケージ飼育は複数の項目において課題を抱えています。特に「正常な行動を表現する自由」——砂浴び、羽ばたき、歩行、止まり木に留まる——はケージの中では事実上不可能です。動物福祉に配慮した農場では、鶏が地面を歩き、自然光を浴び、本来の行動をとれる環境が確保されています。

平飼い・放牧・ケージフリー——飼育方式の違いを知る

動物福祉に配慮した卵の飼育方式には、いくつかの種類があります。「平飼い」は、鶏舎の中でケージを使わず、鶏が床の上を自由に歩き回れる環境です。「放牧」は鶏舎に加えて屋外の放牧場へのアクセスが確保されており、より自然に近い環境です。「ケージフリー」は平飼いや放牧を含むケージを使わない飼育全般を指す言葉として使われます。

飼育方式の違いは、卵の栄養組成にも影響します。屋外で自由に動き回り、虫や草など多様なものを食べて育った鶏の卵は、オメガ3脂肪酸やビタミンDが豊富になる傾向があるという研究報告があります。黄身の色が濃く、旨みが豊かと感じられるのもこうした理由からです。

食の選択が、農業の構造を変える

動物福祉に配慮した卵はバタリーケージのものより価格が高くなります。飼育面積が広く、管理コストが高くなるためです。しかしその価格差は、動物の生きる環境への投資であり、より持続可能な農業の形態への支持でもあります。

企業が相次いでケージフリー卵への移行を宣言し始めているのは、消費者の選択が変わりつつあることへの応答です。マクドナルド、イケア、ユニリーバ、日清食品グループ——国内外の大手企業がケージフリー卵へのコミットメントを表明しています。個々の消費者が何を選ぶかが、産業全体のあり方を押し動かしています。

地球人倶楽部が卵に求めるもの

地球人倶楽部が取り扱う卵は、動物福祉の考え方に則り、清潔で動物の生理に配慮した飼育環境と安全な飼料のもとで育てられた鶏のものです。ストレスの少ない環境で健康に育った鶏は、病気になりにくく、抗生物質への依存度も低くなります。鶏が健康であることが、卵の質の根拠です。

毎日食べる卵だからこそ、その一個が生まれた背景を知り、選ぶことの意味を考えてみてください。卵ひとつに込める問いが、食卓と農業の未来を、静かに変えていきます。

監修者:地球人倶楽部 編集部

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