グラスフェッドとは何か|肉の「質」を決める、飼育環境という視点
COLUMN / 食のはなし
グラスフェッドとは何か
肉の「質」を決める、飼育環境という視点
肉を買うとき、多くの方が「国産か輸入か」「部位は何か」「価格はいくらか」を基準にします。しかし「その動物がどのように育てられたか」を問う方は、まだ少数派です。飼育環境・餌の内容・抗生物質の使用有無――これらの違いが、肉の味と栄養組成、そして食の安全に直接関わっています。
今日は、「グラスフェッド」という言葉の意味から、栄養面の違い、抗生物質・動物福祉といった飼育環境の問題、そして選び方までをまとめてお伝えします。
1グラスフェッドとグレインフェッドの違い
グラスフェッド(Grass-fed)とは、牧草を主食に育てられた牛のことです。生まれてから出荷まで、あるいは仕上げの数か月を除いてほぼ牧草だけで育てられます。一方グレインフェッド(Grain-fed)は、トウモロコシや大豆かすなどの穀物飼料を中心に育てられた牛を指します。
日本国内で流通する牛肉の多くは、肥育後期に穀物飼料を与えて霜降りを作るグレインフェッド(穀物肥育)です。柔らかい食感と濃厚な脂の甘みが特徴で、和牛のブランド価値もこの飼育法に支えられています。グラスフェッドは赤身が中心で、しっかりとした肉本来の味わいが特徴です。どちらが「優れている」ではなく、何を重視するかの選択です。
2脂肪酸組成が示す、栄養面の違い
グラスフェッドとグレインフェッドの最大の違いは、脂肪の質にあります。牧草を主食にしたグラスフェッドの牛肉は、オメガ3脂肪酸と共役リノール酸(CLA)の含有量が高く、体に優しいとされるオメガ6対オメガ3の比率に近づく傾向があります。
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| 項目 | グラスフェッド | グレインフェッド |
|---|---|---|
| 主な飼料 | 牧草 | トウモロコシ等の穀物 |
| 脂肪の色・量 | 黄みがかった脂肪、赤身中心 | 白い脂肪、霜降りが入りやすい |
| 脂肪酸バランス | オメガ3・CLAが多い傾向 | オメガ6が多い傾向 |
| 味わい | しっかりした赤身の味わい | 柔らかく濃厚な脂の甘み |
現代の食生活は、加工油や穀物由来の油を通じてオメガ6を摂りすぎ、オメガ3が不足しがちだと指摘されています。グラスフェッド牛肉は、日々の食事でこのバランスを整える選択肢のひとつです。
3抗生物質の問題――日本と世界の現状
畜産の現場では、過密な飼育環境での感染症予防を目的として、抗生物質が広く使われてきました。抗生物質の過剰使用は薬剤耐性菌の出現リスクを高めるとして、世界保健機関(WHO)が強く警告しており、EUでは成長促進目的での抗生物質使用が2006年から禁止されています。
牧草を主食に、比較的ゆとりのある環境で育てられるグラスフェッドの牛は、密飼いによる感染症リスクが相対的に低く、抗生物質への依存度も下がる傾向があります。動物福祉に配慮した適切な飼育環境は、抗生物質に依存しない健全な畜産を可能にします。
4もうひとつの視点――動物福祉(アニマルウェルフェア)
近年、欧米を中心に注目されているのが「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という考え方です。「飢え・渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「本来の行動をする自由」「恐怖・苦悩からの自由」という5つの自由を基本とし、家畜が生涯を通じてストレスの少ない環境で過ごせているかを問う考え方です。
牧草地で自由に動き回れる環境で育つグラスフェッドの牛は、この動物福祉の観点からも評価されることが多い飼育方法です。味や栄養だけでなく、「どう育てられたか」という背景そのものに価値を見出す動きは、今後の食選びにおいて重要な視点になっていくと考えています。
5「加工品」の中身を知る
ハム・ソーセージ・ベーコンなどの肉加工品には、発色剤(亜硝酸ナトリウム)、保存料、リン酸塩、増量剤などの添加物が使われることが一般的です。肉そのものの質にこだわっても、加工の段階で添加物が増えていては本末転倒です。地球人倶楽部が取り扱う肉加工品は、添加物の使用を極力排し、肉本来の味を活かした製法のものを選んでいます。毎日の食卓に登る加工品だからこそ、その中身へのこだわりが、健康への長期的な影響に関わります。
6選ぶときに、確認したいポイント
① 「グラスフェッド100%」か「グレインフィニッシュ」かを確認する
出荷前の一定期間だけ穀物を与える「グレインフィニッシュ」の牛肉も、グラスフェッドと表示されることがあります。気になる場合は販売者に飼育期間を確認するのが確実です。
② 生産者・牧場が分かるかを見る
どこの、誰が育てた牛かが開示されている商品は、飼育環境への透明性が高い傾向にあります。
③ 加工品は原材料欄も合わせて確認する
肉そのものの質だけでなく、ハムやソーセージに加工されたものは、添加物の有無も選ぶ基準に加えます。
よくある質問
Q. グラスフェッドの牛肉は、味が落ちますか?
A. 「落ちる」というより「違う」というのが正確です。グレインフェッドのような濃厚な脂の甘みは少ない一方、赤身本来の味わいがしっかり感じられます。ステーキよりも煮込みや赤身の旨みを活かした料理と相性が良いといわれます。
Q. 「グラスフェッド」と「和牛」は両立しますか?
A. 和牛は品種の分類、グラスフェッドは飼育方法の分類で、軸が異なります。和牛でも牧草中心に育てる生産者はいますが、一般的な和牛のブランド価値(霜降り)は穀物肥育によって作られているため、両立させている生産者は限られます。
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情報源:
・世界保健機関(WHO)畜産における抗菌薬使用に関するガイドライン
・農林水産省「アニマルウェルフェアについて」