コラム
東京の食料自給率、実は0.47%|「食べる専門」の街を支えているのは誰か|地球人倶楽部
COLUMN / 食と暮らしのはなし
東京の食料自給率、実は0.47%
「食べる専門」の街を支えているのは誰か
「東京都の食料自給率は0%」――テレビの情報番組でこの数字を見て、驚いた方も多いのではないでしょうか。番組では「東京は食べる専門の街」という趣旨の指摘もあったといいます。誇張のように聞こえるかもしれませんが、これは農林水産省が公式に発表している、正真正銘の数字です。今日はこの「0%」の中身と、その先にある日本全体の話まで、少し掘り下げてみたいと思います。

1「0%」の正体は、0.47%
農林水産省の解説ページには、こう記されています。「小数点以下を四捨五入して『0パーセント』と公表していますが、小数点以下も表すと0.47パーセントです(カロリーベース)」。つまり、完全なゼロではありません。ですが四捨五入すれば0%になってしまうほど小さい、というのもまた事実です。
生産額ベースで見ても、東京都は2%(令和4年)。カロリーベース・生産額ベースのどちらで見ても、47都道府県の中で最下位です。同じく1桁台なのは神奈川県(カロリーベース2%、生産額ベース10%)や大阪府(カロリーベース1%、生産額ベース5%)といった、他の大都市圏の自治体に限られます。
2実は、日本全体も他人事ではない
東京都だけの話ではありません。日本全体のカロリーベース食料自給率も、長期的に見れば大きく落ち込んだ末に、今なお低空飛行を続けています。
1965年度には73%あった自給率は、その後の30年ほどでほぼ半減し、2000年代に入る頃には38〜40%台まで落ち込みました。米を中心とした食生活から、畜産物や油脂類の消費が増える食生活へと変わったことが、大きな要因とされています。米はほぼ国内で自給できる一方、肉類や油脂の多くは輸入に頼らざるを得ないためです。
そしてもう一つ、気になる事実があります。この20年以上、自給率はほとんど動いていません。2005年度40%、2015年度39%、2023年度・令和6年度ともに38%――低い水準のまま、ずっと足踏みが続いているのです。国は2030年度までにカロリーベース45%への引き上げを目標に掲げていますが、直近の数字を見る限り、その目標に近づいている気配はうかがえません。
国内で足踏みが続いているだけでなく、海外の主要国と比べても、日本の自給率は際立って低い水準にあります。
出所:農林水産省「世界の食料自給率」(令和4年度・EYストラテジー・アンド・コンサルティング委託試算)をもとに作成
農地に恵まれた輸出国が上位に並ぶのはある程度当然としても、国土面積の近いドイツ(86%)と比べても、日本の低さは際立ちます。東京都の0.47%という数字は、東京だけの特殊な事情というより、こうした国全体・そして国際的に見ても際立った足踏みが、都市という条件のもとで最も極端な形で現れたものなのだと思います。
3東京にも、農業はある
誤解のないように付け加えると、東京都に農業が存在しないわけではありません。都内には6,290ヘクタール(都の総面積の2.8%)の耕地があり、野菜や米、畜産、漁業までもが今も営まれています。練馬の大根、小平のブルーベリーなど、地域に根ざした農業の話を耳にしたことがある方もいるでしょう。
では、なぜ自給率だけを見るとここまで低くなるのか。答えは生産の少なさそのものより、消費の規模が圧倒的に大きいことにあります。日本の人口の1割以上にあたる約1,400万人が東京都に暮らしています。その膨大な食料消費量に対して、都内で作られる食料の量があまりにも小さい――これが「0.47%」という数字の構造です。言い換えれば、東京都の農業が弱いというより、「食べる人の数」に対して「作れる土地の広さ」が、都市という土地の性質上どうしても釣り合わないということです。
4「食べる専門」という言葉の、本当の意味
番組で使われたという「食べる専門」という表現は、なかなか的を射た言い方だと思います。東京の食生活は、全国各地で作られた食料によって、根本から支えられている。裏を返せば、それだけ生産と消費の距離が離れている場所だ、ということでもあります。この距離の遠さは、少なくとも3つの論点につながっていると私たちは考えています。
一つ目は、物流依存というリスクです。大規模な災害や燃料価格の高騰などで物流が滞れば、生産のほとんどを外部に頼る東京は、短期間で食料が不足しかねない構造にあります。
二つ目は、生産地側の疲弊です。「食べる専門」の都市の食卓を、地方の生産者が支え続けているという構図は、同時に、その生産者自身の高齢化や後継者不足という課題とも表裏一体です。都市の消費が、生産地の負担の上に成り立っているという事実を、忘れずにいたいと思います。
三つ目は、顔の見えない食という問題です。生産地と消費地の距離が最大化した場所のひとつが、東京という街なのだと思います。誰が、どこで、どうやって作った食べ物なのか。その情報が、流通の過程でどんどん薄れていってしまう。
51988年から、私たちがやってきたこと
地球人倶楽部は1988年の創業以来、全国各地の生産者と、都市の食卓とを、できるだけまっすぐにつなぐことを続けてきました。「東京は食べる専門」という言葉を聞いて、私たちがまず思い浮かべたのは、大袈裟な危機感ではなく、むしろ日々の宅配で顔を合わせている生産者の方々の顔でした。
自給率0.47%という数字そのものを、私たちの力ですぐに変えることはできません。ですが、「誰が作ったか分からない食べ物」を、「誰が作ったか分かる食べ物」に変えていくこと――それは、都市に暮らしながらでも、一人ひとりが選び直せることだと思っています。東京が「食べる専門」の街であること自体は、地理的な構造上、変えられません。ですがその「食べる」の中身を、少しでも生産者の顔が見えるものにしていくことはできる。私たちは、そう考えながら37年間、野菜や食材をお届けしてきました。
最後になりますが、本稿の執筆にあたり、あらためて生産地の存在の大きさについて考えさせられました。この夏、熊本県を襲った地震により被災された皆様、そしてご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。弊社にも熊本県内で長くお付き合いをいただいている生産者の方々がおり、被害の状況を直接伺う機会もございました。一日も早い復旧と、皆様の穏やかな日常が戻りますことを、社員一同、心よりお祈り申し上げております。
出典:農林水産省「知るから始める『食料自給率のはなし』」/農林水産省「令和6年度食料自給率について」(2025年10月10日発表)/農林水産省「世界の食料自給率」(令和4年度)/再生ジャパン「食料自給率0%の東京都農業が社会に貢献する、数字では測れないもの」
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監修者:地球人倶楽部 編集部